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シリア軍の包囲網のなかで住民は霞を食べている?

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月2日 19時16分

 首都ダマスカス郊外にあるダラヤ地区の取り組みは、どんな過酷な状況にも適応しようとする人間の底力を象徴していると言えるかもしれない。

【参考記事】地獄と化すアレッポで政府軍に抵抗する子供たち

 ダラヤには2012年末の時点で25万人の住民が生活していたが、政府軍による包囲作戦や虐殺によって、住民の大部分が町を去り避難民となった。町に残された1万人は、政府軍の容赦ない包囲網によって生存の危機に追い込まれていた。政府軍が国連による支援物資の搬入を初めて許可したのは、包囲網を敷いてから3年半後。あと数日で物資が尽きるという寸前のタイミングだった。



 ダラヤの住民は包囲下に置かれた当初から、たとえ土地は限られていても、自分たちで栽培できる作物はなんでも育てる覚悟を決めていた。地元の議員によると、ダラヤではどの家庭でも、作物を栽培できそうなスペースがあれば隈なく耕し、小麦やホウレンソウを育てている。

 政府軍からの度重なる砲撃に見舞われた住民は、燃料を確保するため、ありあわせの資源で作れる燃料の開発にも取りかかった。ジャーナリストのアブドゥル・ハミト・アルダラニによると、ダラヤでは石油の供給が遮断されて以来、住民がプラスチック製品を溶かして抽出した自家製の油(通称「ミクスチャー」)を、機械や電化製品の燃料として使用する動きが広がっている。

 生産にはプラスチックを燃やすだけ。ディーゼルや石油、産業用の潤滑油などが抽出できる。品質は悪くないが、一つ間違えば爆発しかねない。

 現地を取材したジャーナリストのアイハム・アルオマンは、そうした小さなプロジェクトを通じて人々が仕事に戻り、地域経済が動き出せば、包囲下の厳しい生活のなかでも活気を取り戻せると強調した。政府軍から兵糧攻めを受け、爆弾も落ちてくるという理不尽な状況下でも、人は努力する。だがそれにも、限度がある。

This article first appeared on the Atlantic Council website.
Hosam al-Jablawi is a Syrian citizen journalist.



ホサム・アル・ジャブラウィ(シリア人市民ジャーナリスト)


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