1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

トルコとロシアの新たな蜜月

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月15日 16時0分

 2人の統治スタイルも似てくる一方だ。クーデター未遂以降、エルドアンはプーチン式に反体制派を弾圧。既に約6万人が解雇や停職処分を受け、6000人以上が当局に拘束されている。



 トルコとロシアの間には、シリア問題もある。エルドアンはシリアのバシャル・アサド大統領と親密だったが、13年に反政府武装勢力支援に回った。以来、アサド政権を支持するロシアと対立する関係にある。 

 だがここへきて、状況はトルコに不利になり始めた。ロシアの軍事介入でアサドの地盤は固まり、トルコ政府が敵視するシリアのクルド人勢力は、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)と戦う仲間としてアメリカの支援を受け、力を増している。

 ロシア軍機撃墜事件後は、プーチン政権もクルド人勢力に肩入れする。クルド人勢力は今年3月、実効支配するシリア北部一帯で連邦制による自治を行うと宣言。トルコ国内のクルド人問題の火に油を注ぎかねない「クルド国家」樹立を阻止するには、エルドアンはプーチンに助けを求めざるを得ない。

【参考記事】あの時、トルコ人はなぜ強権体質のエルドアンを守ったのか

 すべてを考え合わせれば、ロシアとトルコには親密な関係を再開させる強い動機がある。関係強化は両国の多くの人々にとっても喜ばしいことだろう。

 プーチンに影響力を持つとされる極右思想家、アレクサンドル・ドゥーギンはクーデター未遂の当日にトルコで、エルドアンの腹心でアンカラ市長のメリヒ・ギョクチェクと会った。

 ドゥーギンのサイトによれば、ギョクチェクいわくロシア軍機撃墜は米CIAとギュレン支持者の陰謀で、トルコとロシアの仲を裂くことが狙いだった。ギュレン派の脅威を過小評価したのが「トルコの過ちで、今後は過ちを正す。最初の一歩がロシアとの友好関係の回復だ」と、ギョクチェクは話したという。

 エルドアンの命、あるいは政治生命を救ったのがロシアの情報でないとしても、クーデター未遂でエルドアンの欧米不信に拍車が掛かったことは確実だ。独裁志向を強めるエルドアンは自分とよく似た男、プーチンとの絆をひたすら深めている。

[2016.8. 9号掲載]
オーエン・マシューズ(元モスクワ支局長)


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください