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中国漁船300隻が尖閣来襲、「異例」の事態の「意外」な背景

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月12日 15時46分

 この異常事態に日本政府も危機感を募らせている。外務省は怒りの抗議ラッシュを展開。まずは外務省アジア太平洋局長から始まり、次第にポジションを上げながら抗議を行っている。抗議レベルを引き上げていくという外交手法である。もっとも、抗議などどこ吹く風と次々に中国公船が領海に侵入してくるため、レベルは驚くべきペースで上がってきている。

 そのスピード感を如実に示すのが8月7日の郭燕・在京大公使への抗議だろう。午前8時29分に外務省の金杉アジア大洋州局長に抗議され、午後2時に滝崎アジア大洋州局審議官から2発目。午後8時10分に石兼総合外交政策局長から3発目。わずか1時間後の午後9時20分には同じく石兼氏から4発目の抗議。そして午後11時15分に朝一で会った金杉氏から5回目の抗議を受けている。仕事だから仕方がないと言えばそれまでだが、朝一から日付が変わる直前まで怒られ続けるのはせつない仕事としか言いようがない。



 9日にはついに岸田文雄外相自らが程永華・駐日本中国大使に抗議する事態にいたった。早くもレベルはマックスに到達してしまったわけだ。

尖閣だけではなかった"異例"尽くしの中国外交

 尖閣諸島における中国の異常な動きはいったい何を意味しているのだろうか? ついに中国が尖閣諸島の実効支配を奪おうと実力行使に出てきたのか。フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所での敗訴を受け、黒幕である日本に報復しているのではないか。はたまた、タカ派として知られる稲田朋美議員の防衛相就任に対する嫌がらせではないか――などなど専門家の間でもさまざまな意見が飛び交っている。

【参考記事】中国はなぜ尖閣で不可解な挑発行動をエスカレートさせるのか
【参考記事】中国がいま尖閣を狙う、もう一つの理由

 尖閣諸島だけを見ていては理解できないというのが私の立場だ。中国を取り巻く環境を見ていると、対日外交以外にも異例の行動を次々と繰り出している。

 まずは韓国に対する「韓流禁止令」だ。7月13日、韓国政府は在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を認める方針を公表した。THAADに付随する高性能レーダーが人民解放軍を丸裸にしかねないと中国は撤回を求めてきたが、8月に入って韓流スターのイベント中止といった具体策的な報復策に出ている。韓国に行く中国旅行ツアーの中止が始まったとの情報もある。こうした報復そのものは中国ではよくあることだが、配備発表から半月以上が過ぎてから行動開始は不可解きわまりない。

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