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イエメンでも「国境なき医師団」病院に空爆

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月17日 16時9分

<内戦が続くイエメンで「国境なき医師団」が支援する病院が空爆され、11人が死亡した。これまでに数百人の子供が死亡し、少年兵も増えている。サウジ主導のアラブ連合軍とイランが支援するフーシ派の戦闘は長引き、もはや病院すら安全な場所ではない> (写真は空爆を受けた病院の敷地内で、遺体の一部を回収する作業員、8月16日)

 内戦が続くイエメン北西部のハッジャ州アブスで15日、医療・人道援助団体の国境なき医師団(MSF)が支援する病院が空爆され、11人が死亡したとMSFが発表した。MSFスタッフ1人を含む9人が即死し、さらに2人が病院へ搬送される途中に死亡。負傷者は19人だった。

 病院では当時、23人の患者が手術を受けていた。産科病棟には25人の妊産婦と新生児13人、小児科にも12人の子供がいたという。

 空爆で病院を半壊させたのは、サウジアラビア主導の連合軍とみられている。MSFによれば、爆撃当時、病院は度重なる戦闘と空爆により運び込まれる患者で一杯だった。

【参考記事】イエメン内戦で600万人が飢餓に直面

 イエメンでは2015年1月、シーア派大国イランの支援を受けるシーア派の反体制武装勢力フーシ派がクーデターを起こし、アブドラボ・マンスール・ハディ大統領が亡命に追い込まれた。サウジアラビアが主導するスンニ派9カ国のアラブ連合軍は、ハディ政権を支持、同年3月からイエメンのフーシ派の拠点に空爆を行っている。国連によれば、これまでに6000人以上が死亡、250万人が故郷を追われて難民や国内避難民となった。

 国連は6月、サウジ連合軍が空爆で数百人の子供を殺害しているとのレポートを発表した。一方でフーシ派も、少年兵を勧誘しているとして批判されている。

【参考記事】アラブ合同軍は何を目的とするのか

 MSFのイエメン支部は「この1年でMSFの施設が攻撃を受けたのは4回目だ。イエメンでは暴力が民衆に過度の負担を強いている」と声明を出した。「病院で安全に働いているはずだった我々のスタッフと10人の患者の家族に、またお悔やみの言葉を送らなければならないことに怒りを感じる」

病院はターゲット

 声明は「4回目」の残り3回がどの攻撃を指すかは明示していないが、例えば2015年10月には、米軍の武装ヘリコプターがアフガニスタン北部クンドゥズでMSFが支援する施設を誤爆、42人以上が死亡する事件があった。

 シリアでは、MSF支援病院などの病院が、シリア政府軍やロシア軍のターゲットになっている。住民の生存に不可欠な施設を破壊して一刻も早く追い出すためだ。

【参考記事】イエメンに「春」は訪れるか

 イエメンの病院空爆では、疑われたサウジ連合軍が調査に着手したが、AFP通信によればその翌日、イエメンからサウジアラビアにフーシ派によるものとみられる報復砲撃があり、市民7人が死亡したという。

 イエメン内戦が始まってすでに1年半以上が経つ。イエメンの子供にとってはハディ政府もフーシ派も地獄の選択肢でしかない。

コナー・ギャフィー

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