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ネバダの砂漠に出現するクレイジーな共同体

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月22日 15時10分

<米ネバダ州の砂漠で毎年開催されるカウンターカルチャーの祭典「バーニングマン」は、かつてのアーティストの実験場からIT長者の集うイベントへと変容した>(参加者は多種多様なアート作品を展示し、仮装し、人形を燃やして騒ぎまくる)

 ジョン・ロウは、「バーニングマン」について話したくないと言い張る。でも一度話し始めると、言いたいことはいくらでもあるようだ。

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 バーニングマンとは、米ネバダ州の砂漠で毎年開催されるカウンターカルチャーの祭典。ロウは発起人の1人だが、96年に手を切った。まだチケットが35ドル、参加者8000人だった時代だ。

 今では起業家のイーロン・マスクやグーグル創業者のセルゲイ・ブリン、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグら億万長者が参加する大イベントに。マスクはかつてこう言った――HBOのドラマ『シリコンバレー』のクリエーター、マイク・ジャッジは、シリコンバレーのカルチャーを理解していない。なぜならバーニングマンに参加したことがないからだ。

Jim Urquhart-REUTERS

 このイベントでは約1週間にわたり、砂漠に期間限定の街を造って自給自足の共同生活を営む。巨大人形に火を放って燃やすことからバーニングマンの名称が付いた。参加者は奇抜な仮装やパフォーマンスを繰り広げる、クレイジーなお祭り騒ぎだ。

 今年の開催は8月末~9月初め。7万人前後の参加者を見込み、チケットは190~1200ドルと予想される。広報のメーガン・ミラーによれば大量のチケットが無料配布されるが、大多数の参加者は390ドルを支払う。20年前の10倍以上だ。



Jim Urquhart-REUTERS

 発足当初はこんな規模になるはずではなかったと、ロウは言う。アーティストの集う聖地で、ルールのないつかの間の社会を築く実験場だった。それが今はシリコンバレーのエリートに私物化されている。「カネのない若造やヒッピーがリッチな若造やヒッピーに仕え、トップダウンで支配される社会になってしまった。そういうものから遠ざかるために砂漠に行ったのに」

 ミラーが言うには、チケットの値上がりは単に、年々膨れ上がる運営コストや保険、許認可料などを賄うため。14年の運営コストは3000万ドルに上った。

Jim Urquhart-REUTERS

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 ロウは今でも、このイベントが若手アーティストの人生を変える経験になるかもしれないと考える。それでも、実際には金持ちのお砂場遊びになっている。

「フェイスブックやグーグルが従業員に与える休暇としては、最高のものだろう」と、彼は言う。「バーニングマンは今や企業休暇だ。会社公認で裸になり、ドラッグをやり、会ったばかりの誰かとやれるイベントだ」

[2016.8.23号掲載]
リー・スン

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