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「キンドル読み放題」の隠れた(けれども大きな)メリット

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月29日 17時30分

 刊行した作品がすぐに古本屋で販売される日本の場合、読者が「本」という媒体を買っても印税が入ってこないこともある。日本の作家の場合、Kindle Unlimitedで読者が読んでくれた方がお得ということになる。



 Kindle Unlimitedには、もうひとつ隠れた(けれども大きな)メリットがある。それは、「読書依存症の人を増やす」ことだ。

 本の販売数が減っている原因のひとつは「時間の奪い合い」だ。かつてのライバルはテレビくらいだったが、インターネットが普及してからは、現代の人々はゲームやソーシャルメディアに時間を奪われて、読書の時間どころか寝る暇もない。

 だが、「読み放題」でいくらでも本を試せるとなると、ビュッフェのような心境になりがちだ。食べ放題のビュッフェでは、お腹がいっぱいでも、あれもこれも皿に乗せてつい食べ過ぎる。キンドル読み放題でも、「面白そうだな」と思った本をどんどんKindleに入れられる(同時には10作品まで)。ちょっと読んで気に入らなければ、さっさと見捨てて別の作品を試せばいいし、これまで馴染みのないジャンル(味)にも手を出せる。

 そうしているうちに、思いがけない作品や作者と出会い、そこからシリーズまるごと読み続けてしまうこともある(筆者の場合は上記のレイチェル・アーロンの作品がそうだった)。それがコミックであっても、雑誌であっても構わない。読者をインターネットやソーシャルメディアから奪うことができれば、「読書人口」のパイそのものが大きくなる。

「くだらない作品を沢山読んでも仕方がないだろう」という批判は野暮だ。選択眼は、多くの本を読むことによって身につくもの。「読みたいものを、読みたいだけ読む」、そして多くの作品の中から隠れた名作を見つける。そのゲームを楽しむ人が増えれば、出版業界そのものが活気づいてくれるのではないだろうか。

≪筆者のコラム「ベストセラーからアメリカを読む」の記事はこちら≫

渡辺由佳里(エッセイスト)


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