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中国経済圏構想を脅かすモンゴルとバチカンの関係

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月6日 17時0分



 同国の布教活動の先頭にあるのも聖母聖心会だ。エンヘバータル司教は各国から集まった宣教師20人と修道女50数人を統率して布教に携わることになる。首都ウランバートルは現在、「同国初のモンゴル人司教誕生」の歓喜に包まれている。

 聖母聖心会は民族の枠を超えて布教している。オルドスから万里の長城を隔てて南にある、陝西省と山西省に住む中国人(漢民族)社会にもクリスチャンのコミュニティーが誕生した。ベルギーからの聖母聖心会関係者は両省の中国人クリスチャン地域訪問が許可されているが、オルドスには一歩も踏み入れることができない。オルドスの信徒たちはテグスビリクに続くバチカンからの司教任命を待っているが、中国政府によって福音は遮断されたままだ。

【参考記事】中国を捨てて、いざ「イスラム国」へ

 世界に信者の網を広げるバチカン同様、モンゴルも遊牧民特有の広大なネットワークを持つ。独立国家モンゴルと中国支配下の内モンゴル自治区だけでなく、ロシア国内にもカスピ海北西岸とシベリア東部にモンゴル人の自治共和国がある。

 モンゴル人と西洋との交流を容認すれば、北京のコントロールを超えて人的、物的交流が進み、ユーラシアを横断した「大モンゴル国再建の思想」がよみがえる恐れがある、と習政権は危惧する。少数民族の分離活動は一党独裁体制を脅かし、中国の崩壊を引き起こしかねない。

 中国がこうした東西のつながりを断ち切ろうとしている限り、「一帯一路」は掛け声倒れに終わるのではないだろうか。

[2016.9. 6号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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