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北朝鮮の実験のたびに無力化する米ミサイル防衛

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月7日 17時20分

<経済制裁や非難声明も空しく北朝鮮は猛スピードで核実験やミサイル実験を繰り返し、そのたびにアメリカの迎撃をかわす技術を手に入れている>

 北朝鮮は9月5日に弾道ミサイル3発を発射したが、それは単に、20カ国・地域(G20)首脳会議で中国・杭州に集まった世界の首脳たちに武力を誇示するためではなかった。アメリカとの来るべき衝突で、ミサイル防衛システムを妨害し、北朝鮮に優位性をもたらすであろう新技術のテストでもあった。

 5日に発射されたミサイルは、分離型弾頭が装備されているとみられる中距離兵器だった、と語るのは、ミドルベリー国際大学院の東アジア不拡散プログラムでディレクターを務めるジェフリー・ルイスだ。もし事実なら、そのような弾頭は、韓国に配備する予定のアメリカの最新鋭のミサイル防衛システム、「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」を妨害するのに威力を発揮するという。弾頭がロケットから分離されると、標的としてより小さくなり、ときには速度も増すため、迎撃ははるかに困難になるのだ。

【参考記事】金正恩氏の「ぶち切れ核実験」が止まらない理由

 また発射された3発のミサイルのうち、2発がほぼ同時に発射されている。2発のミサイルがほぼ同時に飛んでくれば、ミサイル防衛システムは両方を封じることがより困難になる。

 北朝鮮はミサイル実験を立て続けに行うなかで、長距離兵器を大幅に改良しており、実験を行うたびに、明確な目標を念頭に軍を強化しているようだ。「北朝鮮は、本気で核兵器を使ってアメリカと戦うとしている」とルイスは語る。

制裁も空しく

 国連安全保理は9月6日、今回のミサイル実験を非難し、北朝鮮が実験を続ければ「さらに重い措置」を科すと警告した。安保理は3月、北朝鮮にとって4度目となる1月の核実験を受け、制裁を大幅に強化している。

 アナリストたちは現在、衛星画像や北朝鮮国営メディアが公開したミサイル実験成功のプロパガンダ映像を詳しく調べている。

【参考記事】迎撃ミサイル防衛に潜む限界

 ノドンの設計を微調整している北朝鮮は、その一方で、兵器の射程距離も伸ばしている。

 北朝鮮の核兵器の進化はこれだけではない。先月は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。ミサイルを積んだ潜水艦がいったん海に出てしまえば、ミサイル迎撃用の砲台をレーダーの死角から短時間で攻撃できる可能性がある。もしそうなれば、THAADは自衛力を持たない格好の的になるだろう。

【参考記事】いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD

 同時に固形燃料ロケットの開発も進めている。液体燃料ロケットよりはるかに短時間で発射用意ができるのだ。

 グアムにあるアメリカ軍を核攻撃するのに十分な射程距離を達成するのも遠くないかもしれない。

 北朝鮮のミサイル開発が着実に前進を続ける一方で、アメリカ政府にはそれを阻止する力を失いつつあるかもしれない。

From Foreign Policy Magazine


イリアス・グロール

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