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18年の怨念を超えて握手 マハティールと仇敵が目指す政権打倒

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月13日 17時0分

 国営通信社のベルナマ通信はマハティール・アンワル会談について与党UMNO副党首の「会談は非常に利己主義的であり、マハティールの行動は必死で死にも狂いにみえる」という言葉を引用して伝え、取るに足らない会談であることを印象付けようとしたこともそれを裏付けているといえるだろう。

イスラム化の真の目的

 マレーシアはナジブのイスラム化が隠れ蓑になってイスラム過激組織やそのメンバーが暗躍する危うい兆候を見せている。今年7月にバングラデシュの首都ダッカで起きた日本人7人も犠牲となった人質テロ事件の犯人2人がマレーシアに留学していたことが判明しているほか中東やバングラデシュ、インドネシアなどから過激な思想を持ったイスラム教徒が流入しているのだ。



 ナジブが急いだNSC法にしてもそうだが、イスラム法導入も「なぜ今なのか」と穏健派イスラムが首をかしげるにもかかわらず積極的、と拙速感が否めない。政権側は「イスラム過激組織やメンバーへの警戒網」と必要性を説明するがそれはあくまで表向きで、窮地に追い込まれつつある「1MDB疑惑」から目を逸らすことが真の目的と野党側は指摘する。

政権打倒のシナリオ

 マハティール、アンワルによる野党共闘は中華系野党を巻き込みながら(1)IMDB疑惑の追及(2)イスラム刑法導入反対(3)NSC法による首相権限強化反対の3点を突破口にして反政府の国民的運動を盛り上げる展開になるとの見方が野党関係者の間では広がっている。両者の直接会談後も水面下では双方の事務レベルなどでの接触が続いているとされ、イスラム教の重要行事である犠牲祭(9月12日)が終わった9月末から年末にかけて、街頭デモ、裁判闘争などを通じて反ナジブ運動を繰り広げ、最終的には議会解散か首相辞任に追い込むのが政権打倒のシナリオとされている。

 対するナジブ、与党側による必死の抵抗も予想され、社会不安を高めることでNSC法を発動し、治安維持名目で野党勢力や政権に批判的なメディア、人権・学生団体などへの弾圧強化も予想されるなど、マレーシア情勢は今後目を離すことができない状況になりそうだ。

 それだけ18年目の怨念を超えた握手の意味は大きかったということだ。

[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


大塚智彦(PanAsiaNews)


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