15年の経過とともに、忘れられつつある9・11 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月13日 15時30分
仮にそうだとしても、その結果として「9・11」後の危機管理のキーマンであった人物から、「オバマ=ヒラリーがアメリカを史上最も危険な状態にした」というセリフが飛び出すのは、「9・11を忘れた」言動であることに間違いありません。
このように、「9・11」については、様々な「忘れられ方」が始まっています。そんな世相ですから、例えばテキサス州で「ツインタワー倒壊」をパロディにしたCMが物議を醸したりとか、ほかでもないニューヨークの「9・11慰霊公園」で式典の数日前に「バチュラー(独身最後の)パーティー」と称して「卑猥な悪ふざけ」をやった連中が摘発されたりというような事件も起きるわけです。
しかし、それ以上に罪深いのはアメリカが中東情勢一般に対して関心を失っていることです。この9月12日は、シリア内戦の停戦発効日で、ISISとアルカイダ系以外は戦闘を停止することになっているのですが、この件に関する報道は最低限のものしかありません。また、リビアの情勢も流動的になっているのですが、その報道もほとんどされていません。
もちろんイラク戦争のように、アメリカが介入することで混沌と無秩序を作りだしたことを考えると、アメリカは関与すべきではないという考え方もあるかもしれません。ですが、どう考えても地域の現状に責任があるはずのアメリカで、このように中東への関心が薄れていることは大変な問題だと思います。
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