中国獄中で忘れられるアメリカ人
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月20日 11時0分
中には、ジョン・ケリー国務長官やホワイトハウスから支援を受けた人もいた。しかしスワイダンの件でホワイトハウスから声明は出ておらず、国務省の日例記者会見でも言及はない。
結婚前に家具を買いに
キャサリンによれば、スワイダンは数年前にベトナムでの結婚式に出席したことがきっかけで、アジア旅行に夢中になった。台湾や日本を訪れたときにフィリピン人女性と恋に落ちて、プロポーズ。結婚間近になり、彼は家具を買うために中国に行ったが、このとき同時に、友人の会社にヘリウムを供給してくれるところを探していた。
12年11月14日、スワイダンは珠江デルタの工業都市である広東省東莞で拘束された。起訴状によれば、メキシコ人や中国人による犯罪者集団と共謀し、ドラッグを製造・販売したという。
事件を詳細に調べた対話財団のカムが言うには、スワイダンにとって不利な証拠は、メタンフェタミンが製造されていたと中国当局が主張する工場を一度だけ訪れたことと、ある人物から彼が借りた部屋でドラッグが見つかったことだけだ。法医学的な証拠、つまり指紋もDNAも体内から検出された薬物もないと、カムは言う。「電子メールや電話記録など、彼が調整役だったという証拠も示されていない」。彼は無実だと、カムは確信している。
スワイダンの訴訟は中国の法律の下で進んでいるため、自分たちにできることはないと米国務省の職員は言う。同省によれば、中国で拘束されているアメリカ人は約90人。有名なのはサンディ・ファンギリスだ。
実業家の彼女は昨年3月にヒューストン市の貿易代表団の一員として中国を訪れた際、中国の安全保障を損なう活動に従事していた疑いで治安当局に拘束された。しかし中国側はいまだに、ファンギリスの犯罪行為の証拠を公にしていない。
【参考記事】「イギリス領に戻して!」香港で英連邦復帰求める声
今年7月には国連人権理事会の「恣意的拘禁に関する作業部会」が、中国はファンギリスを正式に起訴していないし、法的支援も行っていないと批判。中国当局は同部会に対して、彼女には「外部の関係者が国家機密を盗む手助けをした」容疑があると述べたと報じられている。
ヒューストンでは、キャサリンが日々、フェイスブックを通してスワイダンへの支援を必死に訴えている。7月には地元の議会議員、テキサス州選出の連邦上院議員(共和党のテッド・クルーズとジョン・コーニン)、「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」の共同委員長、そしてケリーに手紙を出した。本稿執筆時点では、まだ誰からも返事は来ていない。
「貴殿や多くの方々に、数え切れないほど何度も手紙を書きました。しかし中途半端な反応をもらうか、まったく反応がないかでした」と、彼女は書いた。「マークも、中国で拘束された他のアメリカ市民と同じくらい注意を払うに値する。あなた方がそう考えていると、どうか私に教えてください」
「彼は私の息子です」と、彼女は続けた。「彼はアメリカ市民です。息子を中国の刑務所で死なせないでください。マーク・スワイダンを家に連れて帰れるよう、私を助けてください」
[2016.9.20号掲載]
ジェフ・スタイン
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