EUの新著作権法がもたらす「閉じたインターネット」
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月23日 16時0分
過去に加盟国レベルで導入された際には明らかに「失敗」だと言われていた副次的著作権。にもかかわらず、この条項がEUレベルでの著作権法に導入されていたことに対し、Googleをはじめとするオンラインサービス企業やユーザー団体などからつよい非難が上がっている。
このような著作権の導入の影響は甚大だ。まず、「リンクへの課税」が課されたなら、ユーザーはキュレーションサービスをつかって自由に記事を読むことやシェアすることができなくなる。また、あまり知られていない出版社やジャーナリストがキュレーションサービスに載る機会も減ってしまうことから、表現の自由やジャーナリズムの多様性も失われる。
さらに、「使用料」を払える巨大企業だけがサービスを提供することができ、中小企業やスタートアップは市場に参入できないという構造的な格差が生まれ、イノベーションを阻害することにもつながる(実際に2014年のスペインでは、Googleニュースだけではなく国内のオンラインキュレーションサービスも運営停止に追い込まれている)。
オンライン動画プラットフォームの著作権侵害への責任強化
現在、YoutubeやFacebookといった動画をホスティングするサービスは、著作権侵害の訴えが著作者側からあった場合にのみ、当該動画を削除している(ノーティス・アンド・テイクダウン方式)。あたらしく提唱されたEU法では、ホスティングプラットフォームの責任が強化され、ユーザーがアップしたすべての動画が著作権侵害していないかをチェックし、著作者から訴えられる前に動画を削除するクローリングの機能をつけることが求められている。
ちなみに、コンテンツIDをつかったこのクローリングの機能は、すでにYoutubeでは実装されているのだが、二次創作やレビュー動画、ホームビデオ...といった、ファンがつくった罪のない動画まで自動的に消してしまうことがたびたびあり、問題視されている。
この機能をほかのすべての動画ホスティングサービスがつけなければならないとしたらどうだろうか? たとえばSoundCloudなどは、まだ広く知られていないアーティストが作品を発表し、人気を得るきっかけをつくる場所となっている。ここで、アルゴリズムによって「著作権を侵害したとみなされた」すべてのコンテンツが自動的に消されることになれば、創作活動の萎縮につながってしまう。また、このような厳しい規制によってイノベーティブなあたらしい動画ホスティングサービスが生まれにくくなり、結果としてすでにコンテンツID形式を採用しているYoutubeの独占市場が続くことになるだろう。
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