オバマ政権が期待したイランの穏健化は幻想だ
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月29日 10時30分
ロウハニについて、イスラム革命初期の指導者とは違うと考える根拠は何もない。88年、反体制派の政治犯3万人を処刑した当時の体制と現政権との間に本質的な違いはない。
【参考記事】エジプトの過激派にナチスからの地雷の贈り物
最近になって明らかになった情報によれば、このとき反体制派の処刑やその他の人権侵害に反対した当局者は、例外なく権力の座を追われた。一方、積極的に加担した当局者は高く評価され、現在まで権力の中枢にとどまっている例も少なくない。
ロウハニ政権のプルモハンマディ法相もその1人だ。88年当時、プルモハンマディは情報省の代表として、処刑する政治犯を選ぶ「死の委員会」のメンバーに加わっていた。このような人物が現政権で大きな力を持っていること自体、「穏健派」への期待が幻想にすぎないことを雄弁に物語る。
イランの対外的な侵略姿勢と国内での暴虐に立ち向かう勢力が、現体制の内部から生まれることは期待できない。対抗勢力の芽は、勇気あるイランの活動家と国際社会の中にしか存在し得ないのだ。
[2016.10. 4号掲載]
ジュリオ・テルツィ(元イタリア外相)
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