コンゴ「武器としての性暴力」と闘う医師に学ぶこと
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月2日 20時14分
日本における映画上映の意義
日本において、映画『女を修理する男』を上映する動機は三点ある。
第一に、コンゴ紛争が勃発してから本年で20年が経つため、この機にコンゴの紛争について振り返る機会をつくりたかったことである。1994年に起きた隣国ルワンダのジェノサイドを知っている日本人は多数いる。それに対して、それがコンゴに飛び火してコンゴ大戦が勃発したことを理解している人は少数派である。
第二に、ムクウェゲ氏の活動を通して、紛争長期化の要因である紛争鉱物問題を取り上げ、性暴力とグローバル経済との関係性に関する認識を広めたいと思ったからである。性暴力と紛争をテーマとする映画は過去に数本上映されたものの、性暴力と紛争鉱物の関係性を取り上げ、かつムクウェゲ氏の活動を描いたドキュメンタリー映画は本作品が初めてである。そのため、性暴力と紛争鉱物の問題に関する認知度が高くない日本において、本映画を上映する意義は十分にあると判断した。
第三に、「途上国」の人々が「無力」だから、「有能」な「先進国」が助けないといけないという一般的な先入観を排除したかったことである。当然ながら、ガバナンスが弱い国や紛争国にも、ムクウェゲ氏のような優秀で正義感がある方は大勢いる。我々にできることは必ずしも資金援助や技術提供だけではなく、性暴力のような人権侵害に対して声をあげたり真実を追求することも、人助けになる。
映画上映の運営のために、専門家や学生と任意団体「コンゴの性暴力と紛争を考える会」を立ち上げ、さまざまな団体に助成金を申請したり、広報などの協力をお願いした。またコンゴの紛争と資源の結びつき、国際社会の対応、人権問題と市民社会のアドボカシーなどについての勉強を重ねてきた。
日本初公開となった2016年6月の立教大学での上映会においては、参加者から、「性暴力と紛争資源の複雑な関係性を初めて知った」「ルワンダ・ジェノサイドは知っていたが、その後のコンゴ戦争は知らなかった」「ムクウェゲ氏の偉大さと女性の強さが印象的」「戦後70年が経った現在も、紛争下の性暴力について考えなくては」という感想が寄せられた。
【デニ・ムクウェゲ医師来日講演会】
「コンゴ東部における性暴力と紛争」
第1部:10月3日14:00~16:00 (笹川平和財団国際会議場)
第2部:10月4日 9:40~12:10(東京大学本郷キャンパス 伊藤国際謝恩ホール)
【『女を修理する男』上映会】
2016年
10月24日:静岡県立大学 http://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/event/e20161024/index.html
11月上旬:岡山大学
11月17日:上智大学
11月25日:長崎大学
11月30日:神戸市立外国語大学
12月10日:宇都宮大学
12月14日:早稲田大学
日程不明:同志社大学、弘前大学
2017年
1月28日:東京(アムネスティー映画祭)http://www.amnesty.or.jp/aff/
1月29日:名古屋(AMA AFRICA と愛知県青年海外協力隊を支援する会)
米川正子(立教大学特任准教授)、華井和代 (東京大学公共政策大学院)
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