前進できない野党の憂鬱:コービン労働党首再選
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月5日 17時30分
(とは言え、個人的にもっとも脱力したのは、リバプールで行われていた党大会会場の警備が手配されてなかったことが直前になって判明し、早急に手配しなければ警察が会場を閉鎖すると報道された時だった。これはもう、「運営」以前の問題である)
また、コービン支持者たちの悪評もいつまでたっても収まらない。コービン支持者は奇妙な陣営だ。きらきら瞳を輝かせた理想に燃えるインテリジェントで優秀な若者の集団、と言われるかと思えば、一方では少しでも意見の違う者や、コービンに反対する者にはツイッターで総攻撃を浴びせたり、電話で嫌がらせをしたりする、ミリタントな集団とも言われる。7月には40人の労働党女性議員たちが「レイプや死の脅迫、車を破壊されたり、窓から煉瓦を投げ入れられた」として、特に女性に対する虐待行為をやめるように自分の支持者たちに呼び掛けてほしいとコービンに書面で要求していた。
ブライトンの街にもこの落書きが複数出現。額には「EU」の落書きON落書き
それでもコービンは勝つ
オーウェン・ジョーンズは、批判しながらも、今回もコービンに投票したと発言している。いまは再び気を取り直したようにコービンの援護射撃をしているが、彼が抱えていた疑念は本当に消えたのだろうか?
一方、反コービン派が抱える最大の問題は、彼らにはコービンに勝てるようなオルタナティヴな党首候補も政策もないということだ(コービン陣営の政策がミリバンド時代のそれと似てきている以上、両者の政策は本人たちが言うほど違わない)。
とりあえず、現在の労働党内部ではコービンは無敵なのだ。だから何度議員たちがクーデターを起こし、党首選をやっても彼が勝つ。
反コービン陣営がプラグマティズムを重んじるなら、いい加減でこの現実を認めるべきだろう。彼らが本当にリアリストなら、「コービンさえいなくなれば」という理想も捨てるべきだ。あるものでやっていくのが本物のリアリストだろう。
労働党がクーデターだ何だと大騒ぎしている間、地べたの人々は毎日仕事に行き、子供を学校に送り迎えし、たまにパブで飲んだりして淡々と暮らしてきたのである。彼らにとっては労働党の党首選など、「またか」ぐらいの感慨しかない。そしてそうした人々の数は、コービンが集会で動員する数よりも圧倒的に多いのだ。
だからこそ、もはや労働党の外の人々に労働党の未来を決めてもらうしかないのではないかという声もある。
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