「トランプ隠し」作戦が効いた、副大統領候補討論の評価 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月6日 16時0分
<今週の副大統領候補の討論会では、共和党のペンスがトランプのことを語らない「トランプ隠し」作戦に出た。結果として、トランプを糾弾した民主党のケインにペンスが「勝利」したという評価に>(写真:トランプを糾弾するケイン〔左〕の攻撃をペンス〔右〕は完全にスルー)
今週4日にバージニア州で行われた副大統領候補のテレビ討論は、様々な意味で注目されていました。まず、共和党のマイク・ペンス候補(インディアナ州知事)は、前週以来「国税を長期間にわたって払っていない」ことがわかって炎上中のトランプ陣営を、「救う」ことができるかどうかが話題になっていました。
一方、民主党のティム・ケイン候補(バージニア州選出上院議員、同州の元知事)には、相方のヒラリー・クリントンが若年層の間で不人気なのをカバーするという役割、具体的には人間味や庶民性が期待されていました。
ところがその討論の内容は、大変に奇妙な流れになりました。というのは、ペンスは「まるでドナルド・トランプという候補の存在がない」かのように振る舞ったのです。一種の「トランプ隠し」作戦です。
【参考記事】前代未聞のトランプ節税問題と奇妙な擁護論
例えば、ケインが「トランプは税金を払っていない」と突っ込むと、ペンスは「困ったような顔をしながら首を横に振って」まるで、ケインの批判が「ウソ」であるかのようなボディ・ランゲージを見せるのです。では、その批判に対して反論するかというと、それは「一切しない」という非常に高度な作戦に出ていました。正に「トランプ隠し」の戦術です。
それでは、ペンスは何を語ったかというと、極めてクラシックな共和党的な論法によって、民主党のリベラリズムを攻撃しました。例えば、中絶問題で強硬な姿勢を見せ、財政規律に関してはオバマ政権を批判するという論法です。そして、その「典型的な共和党右派の論法」はトランプのアナーキーな罵倒スピーチに慣れた耳には「何ともいえない懐かしさ」を感じさせました。これもまた、「トランプ隠し」に他なりません。
そんな中で、ケインはあくまで「トランプ」にこだわりました。例えば、ペンスが「ロシアの横暴を許したのは、オバマとヒラリーの外交が弱いからだ」と攻め立てると、ケインは「そのロシアのプーチンをトランプは賞賛している」と激しく突っ込むわけです。ですが、そのケンカをペンスは「困ったような顔」でスルーする、その繰り返しでした。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
米民主党の大統領候補、ハリス氏を推す動き加速…トランプ氏「バイデンより倒しやすい」
読売新聞 / 2024年7月22日 22時22分
-
米大統領選「バイデン辞退」の一部報道で予想はますます困難に…大統領候補が「辞任」または「逝去」すると選挙はどうなるのか【マクロストラテジストの見通し】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 9時15分
-
バイデン氏が大統領選を辞退したら何が起こるか トランプ氏に勝てる若い候補が出現する可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 10時30分
-
バイデン氏「大統領選撤退」を、民主支持者の約3割=ロイター/イプソス調査
ロイター / 2024年7月3日 6時13分
-
〝一瞬のスキ〟が致命傷に 6月28日に大統領選TV討論
Japan In-depth / 2024年6月25日 19時0分
ランキング
-
1米国初の女性・アジア系大統領を目指すハリス氏、手腕には厳しい評価も
産経ニュース / 2024年7月22日 19時11分
-
2バイデン氏の撤退決断、米主要紙が評価 「勇気ある選択」「米国の最良の利益」
産経ニュース / 2024年7月22日 19時34分
-
3北朝鮮エリートの脱北ラッシュ、なぜ外交官なのか…海外生活で「目覚めた」
KOREA WAVE / 2024年7月22日 16時30分
-
4南シナ海で「屈服せず」 比大統領、緊張緩和模索も
共同通信 / 2024年7月22日 22時59分
-
5バイデン氏大統領選からの“撤退表明” トランプ氏「いんちきジョーは最悪の大統領」とSNS投稿
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 11時43分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください