プーチンをヨーロッパ人と思ったら大間違い
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月7日 18時14分
<ロシアがシリアで停戦を守らず無差別爆撃を再開した、といってアメリカは怒る。だがロシアは、ウクライナでも約束など守ったことがない。対ロ外交で間違いを繰り返すのは、ロシア人もヨーロッパ人と同じような考え方をしていると思い込んでいるからだ>
まるで故障中の自動販売機に入れてしまった硬貨のように、ロシアと協力してシリア内戦を停戦に導くというアメリカの努力は無駄に終わった。
それどころか、ロシアとシリア両政府軍は、停戦の発効からわずか1週間後に人道支援物資を載せた国連の車列を攻撃し、その後は反政府派支配地域の北部アレッポで過去最大級の空爆を続けている。ロシアを取り込もうという長く不毛な外交努力の果てに、アメリカは米ロ2国間を停止しシリア和平の道は閉ざされた。
【参考記事】オバマが見捨てたアレッポでロシアが焦土作戦
この経過を見ると、一つの疑問が湧いてくる。そもそもなぜバラク・オバマ米政権は、ウクライナ東部の停戦合意をことこどく反故にしてきたロシアが、シリア内戦解決のための2国間協議の約束は守ると考えたのか。
ロシアは、欧米人がロシア人に対して抱く誤った親近感のおかげでトクをしている。というのも欧米人は、見るからに異質なアジアなどの国々と比べればロシアはもっとヨーロッパに近くて、西側の人道主義を理解する指導者もいるはずだという根拠のない思い込みをしている。
指導層はほとんど白人だが
欧米人は昔からアジアの異質性を強調し過ぎることで批判されてきたが、グローバリゼーションが進むにつれて東西の違いは小さくなった。伝達される情報のスピードや量が増え、自分から遠く離れた人々や場所との親交が深まったような錯覚が生まれたからだ。さらに、全人類の人権を尊重しようという気運が高まるにつれて、国家間の文化的な違いに言及すること自体がタブーになるほど、国家や文化の異質性をめぐる問題に敏感になった。
ロシアの場合、国家指導者のほとんどが白人で、西側諸国のやり方を忠実に模倣した立法、行政、司法機関を持つために、西側との違いは一層目立たなくなった。米共和党大統領候補ドナルド・トランプが中国の習近平国家主席と「親友」になったと言いふらすところは想像できないが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が相手なら気安くできてしまったのもそのせいだ。
【参考記事】トランプはプーチンの操り人形?
だがロシアがヨーロッパに属すという勘違いは、プーチンを利するだけだ。外部から見たロシアに関する我々の知識は薄っぺらで情報も限られているため、プーチンは国外での自分のイメージを思い通りに操作できる。西側の民主主義がぐらつく間に、ロシアには決断力があって物事に動じない父親のように頼れる指導者がいると思わせるのも自由自在だ。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
メドベージェフ「ウクライナに核移転ならNATOに核攻撃されたとみなす」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 18時8分
-
欧米がウクライナへの軍事支援強化 ロシアは“核の脅し”強める
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 18時55分
-
なぜプーチンは長期政権を維持できるのか...意外にも、ロシア国内で人気が落ちない「3つの理由」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 13時57分
-
トランプは威信を懸けてウクライナを停戦させる 「威信」こそがアメリカファーストの根幹だ
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 15時0分
-
「またトラ」でウクライナ停戦が成立すれば、北朝鮮兵が平和維持軍に?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月12日 16時0分
ランキング
-
1トランプ氏、メキシコ大統領が「国境封鎖に同意」と主張 本人は否定
AFPBB News / 2024年11月28日 14時33分
-
2ノルウェー皇太子妃の連れ子、釈放も新たな性犯罪容疑
AFPBB News / 2024年11月28日 12時41分
-
3バルニエ仏内閣が崩壊危機、来年予算案巡る議会との折衝難航で
ロイター / 2024年11月28日 14時3分
-
4台湾が防空演習 中国の気球2基確認の報告も
AFPBB News / 2024年11月28日 15時10分
-
5停戦合意後のレバノンの様子は…首都ベイルートに住む日本人が見た“停戦合意直前の攻撃”とは
日テレNEWS NNN / 2024年11月28日 10時31分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください