「オクトーバー・サプライズ」が大統領選の情勢を一気に変える
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月12日 11時40分
だがネット上の反応を見ると、リークの内容よりも発表のタイミングに注目している人がいる。むろん、「ヒラリーは嘘つきだ」「明かしてくれてありがとう」とウィキリークスを讃えるものもある。だが、彼らはすでにアンチ・ヒラリーの人々だ。
全体的には、「すでに知っていることで、何も新しいことはない」「トランプの発言に比べたら、こんなのたいしたことではない」「ロシア政府が絡んでいると知ってからは、ウィキリークスがやることに尊敬はない」「トランプを擁護するためにプーチンが電話1本かけたら、アサンジはリークするのか?」といったしらけた反応が多い。
ツイッターでは #TrumpTapes が長時間トレンドのトップを保っていたが、 #Wikileaks はトレンドに上がってもこなかった。今回のウィキリークスのリークで、浮動票が大きく動く兆候はない。
【参考記事】選挙ボランティアから見える、大統領選「地上戦」の現状
広告業界の有名人ドニー・ドイチュは、長年トランプと懇意にしていることでも知られる。大統領選挙でのトランプには最初から批判的だが、昨年からトランプが予備選に勝つことを予測していた人物でもある。そのドイチュが、テープが公になった直後に、政治番組で「これでおしまいだ(It's over)」と断言した。
2008年の共和党指名候補ジョン・マケインの選挙参謀だったスティーブ・シュミットも、「トランプは共和党の知性が腐敗しているのを露呈させた」と語り、すでに大統領選での敗北を確信し、共和党が上院議会でも過半数を失うと予測している。そして、共和党は「深く自省するべきだ」とも。
それでも10月はまだ終わっていない。第三政党を支持する浮動票は、投票の1カ月前の現在でもアメリカ全体で約8%あり、これまでの選挙で見られなかったほど多い。
この浮動票を動かすオクトーバー・サプライズの可能性がある限り、大統領選の結末はまだまだわからない。
渡辺由佳里(エッセイスト)
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