「ホワイト・ヘルメット」を無視するノーベル平和賞の大罪
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月13日 10時30分
アレッポの状況は、90年代前半のサラエボを思い出させる。旧ユーゴスラビアのサラエボでは、絶え間ない空爆と苛烈な「民族浄化」が長期間続き、ついにアメリカが介入せざるを得なくなり、セルビア人勢力に対するNATOの空爆が始まった。このときは、それが和平への道を開いた。
ノーベル賞委員会は、09年にも救いようのない愚行をしでかした。実質的に、アメリカ大統領に当選したというだけの理由で、バラク・オバマに平和賞を授与したのだ。
ブッシュ前政権との違いを鮮明にさせたアメリカ初の黒人大統領は、平和の拡大に寄与する可能性がかすかにあるだけで平和賞に値するということらしい。本来は、実際の業績をたたえる賞のはずなのだが。
【参考記事】ロシア・シリア軍の「蛮行」、アメリカの「奇行」
ひょっとすると、ノーベル賞委員会が今年ホワイト・ヘルメットへの授賞を見送ったのは、09年にオバマに平和賞を与えてしまったことが理由だったのかもしれない。
オバマはシリアでの人権蹂躙を黙殺し続けてきた。これまで下した意思決定はことごとくお粗末で、プーチンとアサドの独裁者コンビが罪なき市民を殺すのを放置している。もしホワイト・ヘルメットへの授賞を発表していたら、オバマに「平和」賞を与えたことの是非が問われていたかもしれない。人々が無残に殺されるのを傍観しているのは、「平和」的な行動とは到底言えないからだ。
結局、ノーベル賞委員会にとっては、正義よりもメンツが大事だったのだろう。
[2016.10.18号掲載]
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
イスラエル、防空態勢強化 親イラン組織攻撃を警戒
共同通信 / 2024年7月22日 7時27分
-
シリア議会選、アサド政権派が7割超の議席獲得で圧勝…大統領任期延長の憲法改正着手か
読売新聞 / 2024年7月19日 18時28分
-
A24が史上最大の製作費を投じ、アメリカで起きる内戦を描く『シビル・ウォー アメリカ最後の日』本予告解禁
クランクイン! / 2024年7月18日 18時0分
-
イスラエル軍の指揮統制の問題が浮き彫りに...最も明確に表れた3つの事例
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月9日 15時0分
-
「侵攻の引き金」を引いたウクライナの"失策" 対立の根底には2つの「ロシア人像」がある
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 20時0分
ランキング
-
1米国初の女性・アジア系大統領を目指すハリス氏、手腕には厳しい評価も
産経ニュース / 2024年7月22日 19時11分
-
2バイデン氏の撤退決断、米主要紙が評価 「勇気ある選択」「米国の最良の利益」
産経ニュース / 2024年7月22日 19時34分
-
3北朝鮮エリートの脱北ラッシュ、なぜ外交官なのか…海外生活で「目覚めた」
KOREA WAVE / 2024年7月22日 16時30分
-
4バイデン氏大統領選からの“撤退表明” トランプ氏「いんちきジョーは最悪の大統領」とSNS投稿
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 11時43分
-
5反捕鯨団体の創設者を拘束 妨害関連で日本引き渡しも
共同通信 / 2024年7月22日 22時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください