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近年最悪の緊張状態にあるカシミール紛争

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月13日 17時0分



 最近も、2014年にインドの首相に就任したナレンドラ・モディ首相が、就任式にパキスタンのナワズ・シャリフ首相を招待するなど、カシミール問題をめぐる雪解けが期待された。だがパキスタン軍は国境沿いで攻撃を行うなど小競り合いを続けてこれに反発した。

 現在の情勢の悪化について、パキスタンのシャリフは先月21日に国連で演説して、インド兵に殺害されたヒズボル・ムジャヒディンの司令官を英雄視する発言をした。するとインドのモディ首相は「パキスタンを孤立させる」と厳しい姿勢を見せている。両国の関係は再び緊張の度合を高めている。

 すぐに戦争、ということにはならないが、両国の苛立ちがますます高まっていることは明らかで、今後の展開は予測できない状況だ。過激派組織ジャイシュ・エ・ムハンマドが、インド国内でのテロ攻撃を計画しているとも報じられている。さらにその余波はエンターテインメントにも波及しており、インド映画のボリウッドでは、今の状況が落ち着くまでパキスタン人俳優の出演を禁止し、パキスタン側もインド人クリケット選手を取り上げた映画の公開を中止した。

 カシミール紛争は、世界が余り関心を払わない中で、過去最悪の危機を迎えている。


(今年7月15日、スリナガルで外出禁止令の中を、インド部隊の命令に反して外出する女性 Photo by Yawar Nazir)


(今年7月17日、厳しい外出禁止令にあるスリナガル市街をパトロールするインド治安部隊。カシミールには常時50万人のインド治安部隊が配備されている Photo by Yawar Nazir)

(今年7月23日、スリナガルでの反インドのデモ。デモなどによって長期にわたる外出禁止令が出された Photo by Yawar Nazir)


(今年8月18日、スリナガルの病院では負傷者が溢れかえっている Photo by Yawar Nazir)


(今年8月30日、デモ隊を追い払うために動員されたインド治安部隊のメンバー。インド政府はこの時期までに2000人の追加部隊員をカシミールに派遣した Photo by Yawar Nazir)


【記事:山田敏弘】
ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、クーリエ・ジャポンやITメディア・ビジネスオンラインなどで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている

【写真:Yawar Kabli(ヤワル・カブリ)】
カシミール在住のカメラマン。1982年、スリナガル生まれ。ロイター通信やガンマなどのカメラマンを経て、現在は Getty Images にフリーランスとして所属し、カシミール発のニュースなどをカバーしている

山田敏弘(ジャーナリスト)


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