中国を選んだフィリピンのドゥテルテ大統領――訪中決定
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月14日 16時0分
ドゥテルテ大統領が、チャイナマネーによって心を買われたことは、すでに本コラムでも何度も書いてきたので、まあ、この発言は当然だろうと思われる。
筆者の注意を引いたのは、もっとほかのことだった。
それは中国がなんと、フィリピンに「大型麻薬中毒者治療センター」設立を支援したことである。
ドゥテルテ大統領がオバマ大統領を「地獄に落ちろ」とまで罵倒した理由は、「ドゥテルテ大統領が、まともな裁判も経ずに麻薬中毒者あるいは販売者を逮捕して射殺してしまったこと」を、オバマ大統領が人権問題だとして非難したことにある。
そのために10月12日、ドゥテルテ大統領は「来年のアメリカとの合同軍事演習は中止する」という声明を出した。
理由として12日の「フィリピン フィナンシャル」は、ドゥテルテ大統領が、「アメリカは共同軍事演習をしたあとに、毎回、軍事演習に使った武器装備を全てアメリカに持ち帰ってしまう。あの軍事演習は、アメリカに利益をもたらすだけで、フィリピン軍にはいかなる利益も残してない」という不満を表したと書いている。「もし戦争になったら、われわれは、本当にアメリカを必要とするのだろうか?」とも述べたという。
中国にとって、こんな嬉しいことはないと言っても過言ではないだろう。
そこで中国は、ドゥテルテ大統領を怒らせたオバマ大統領の非難に照準を当てて、「麻薬中毒者」に注目し、麻薬中毒患者をフィリピンから無くそうとしているドゥテルテ大統領に「大型麻薬中毒者治療センターを」設立に際し、経費的支援をすることを決定したのである。
これに対してドゥテルテ大統領は「これで、誰が本当の友人で、誰が敵なのかが、はっきり分かっただろう」と話している。
「中露が目を光らせていることを忘れるな!」――ドゥテルテ大統領
危険を増してきたのは、ドゥテルテ大統領が、「アメリカよ、威張るんじゃないぞ! 中露がお前に目を光らせていることを忘れるなよ!」と言ったことである。
今のところ、ドゥテルテ大統領としては、アメリカとフィリピンとの軍事同盟までは撤廃しようとは思ってないようだ。
しかしそれでも、フィリピンが中露に傾き始めたとすれば、東アジア情勢は地殻変動を起こし始め、それは日本にも深い影響を与えることになる。
ドゥテルテ大統領はロシアのプーチン大統領のことも礼賛している。「プーチンが本気で決意すれば、何でもできるんだ」という発言から、それは窺い知ることができる。
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