「ホワイト・ヘルメット」をめぐる賛否。彼らは何者なのか?
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月21日 16時30分
しかし、こうした言葉とは裏腹に、ファトフ軍の広報ビデオに登場するホワイト・ヘルメットのボランティアは「シャッビーハ(政権支持者)の遺体はゴミ箱に棄てる」と主張している。しかも、彼らがどのように「解放区」での活動を許可されているのかは実は明らかではない。
「反体制派」がさまざまな武装集団・戦闘員の寄り合い所帯であることは周知の通りだ。アレッポ市東部で籠城を続ける「アレッポ・ファトフ軍」、イドリブ県、ハマー県北部、アレッポ県西部を支配する「ファトフ軍」、トルコ軍とともにアレッポ県北部でイスラーム国と西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊(YPG)主導のシリア民主軍双方と対峙する「ハワール・キッリス作戦司令室」は、シャーム・ファトフ戦線、シャーム自由人イスラーム運動といったアル=カーイダ系のイスラーム過激派、ヌールッディーン・ザンキー運動やムジャーヒディーン軍といった「穏健な反体制派」と目される武装集団、そして世界中から参集した外国人戦闘員によって構成されている。
ホワイト・ヘルメットは、「解放区」の自治を担うとされる「地元評議会」やこれらの武装集団との折衝を通じて活動地域を拡大したと主張する。だが、群雄割拠の状態にある「解放区」で、誰からも攻撃を受けずに活動できるのは、ホワイト・ヘルメットがイスラーム過激派や外国人戦闘員とさえも協力・相互依存関係にあるためだ、との解釈も成り立つ。
空爆の被害とされる写真にも明らかな「ねつ造」が存在
とりわけ、ホワイト・ヘルメットとシャーム・ファトフ戦線の「親密」な関係は、インターネット上に氾濫する多くの写真や画像から明らかだとも言われる。ファトフ軍によるイドリブ市制圧(2015年3月)に際して、シャーム・ファトフ戦線メンバーとともに組織の旗を振るボランティアの映像、アレッポ県フライターン市でシャーム・ファトフ戦線が処刑した住民の遺体を搬送・処分するボランティアの写真などがそれだ。
バッシャール・アサド大統領の発言を借用すると、これらのデータは現地で実際に何が起きたのかを示しておらず、プロパガンダの材料に過ぎない。しかし、それらはホワイト・ヘルメットが「シャーム・ファトフ戦線の救援部門」だとする断定にも説得力を与えている。ホワイト・ヘルメットが「中立的」だというのなら、これらのデータに反論し、シャーム・ファトフ戦線との関係を否定して然るべきだが、彼らが明確な態度を示すことはない。
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