ベネズエラは100%独裁政権になりました
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月24日 17時41分
10月20日の夜、ベネズエラの選挙管理委員会は大統領罷免の手続きを中止することを決定しました。
ここ数ヶ月は特に大統領罷免を求める国民投票実施の手続きを中心に与野党の攻防が続いていました。
ベネズエラの憲法では明確に国民が大統領の罷免を求める権利を認めています。
さらに、野党派内からは「罷免選挙を実施ないことは(大統領罷免を定める憲法を制定した)チャベスの遺産に反する」という意見も出ていました。
この緊張状態が、20日(木)の夜に突然、何の前触れもなく、終わりました。
というわけで、この日を境にベネズエラのチャベス派政権は正式に独裁政権となりました。
"この17年間、政治学者はウゴ・チャベスがベネズエラで作り出した中間的なシステムを表現する方法を考えあぐねていた。通常の意味で言えば民主主義とは言いがたく、かといって通常の独裁政治でもない。
政府は憲法の規定に厳密に従ってはいなかったが、大きくみれば、人々には結社の自由も、言論の自由も投票の自由もあった。これを何と呼ぶか?競合的独裁主義?ハイブリッド政権?反自由主義的民主主義?どの呼び方もしっくりこないように思えた。ただ、完全には独裁政治とはいえないベネズエラの中途半端さの余情だけがしっくりきた。
ベネズエラにいる民主化を求める活動家にとって、「ちょっとだけ独裁」体制を築きあげた政権との戦いは、心身のすり減るような試練だった。憲法で定められた大統領罷免を求める権利の破壊に対する純粋な怒りの中に、この明瞭さに対する感謝の念をかすかに感じ取ることができるのはそのせいだ。
我々は形容詞から解放された。これでようやく学問的な回りくどさと縁が切れる。
ハイフンでつないで表現する必要はもうない。ベネズエラはただの独裁政治なのだ。
It's official: Venezuela is a dictatorship
ちなみに今回の選管の決定には、笑ってしまうほどに、正当性のみじんもありません。
争点となっていた罷免を求める20%の署名集めが始まる日まで1週間を切った時点で、チャベス派知事が治める州の裁判所が「20%の署名集めを実施するための1%の署名は無効である」と次々と(実際には数時間の差でほとんど同時に、つまりは裏で示し合わせて)発表しました。
憲法を扱う最高裁判所ではなく、刑事事件を扱う地方の下級裁判所の判断に基づき、選管は罷免選挙実施の中止を発表しました。日本に比べればはるかにカオスなベネズエラ的にも、これは滅茶苦茶です。
さらにエンリケ・カプリレスや野党連合MUDのまとめ役チュオ・トレアルバなど野党派指導者の海外渡航の禁止も発表されました。
そして当のマドゥロ大統領はいずこに?現在外遊中です。
※当記事は野田 香奈子氏のブログ「ベネズエラで起きていること」の記事を転載したものです。
野田 香奈子
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