イエレン議長「高圧経済」理論は、日本経済には適用できないのでは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月25日 15時0分
ということは、日本の「高圧経済」は、この3つの「独自要因」を打ち消す効果を発揮しながら続けられているわけで、仮にそうであれば「改革のできない」現状を埋めるために続けられているという評価も可能です。
もっと言えば、アベノミクスの「3本の矢」というのは、「第1の矢(流動性供給)」と「第2の矢(財政出動)」という「高圧経済」が先行することで、そのメリットが「第3の矢(構造改革)」を「しなくてもいい」、つまり改革のできない古い体質でも経済の格好がついてしまうような「相殺」効果を生んでしまっているというわけです。
では、どうしたら良いのでしょうか? 私はここまでの円安誘導と株高を全面否定する必要はないと思いますが、日本の場合はそろそろ政策転換の時期ではないかと感じています。流動性供給や公共投資が、結局は改革を「しなくてもいい」という現状への安住に誘導してしまっているのであれば、一旦これを沈静化するのも手と思うのです。
とはいっても、社会の安定性を確保するために、ある程度の再分配上乗せは進める、その一方で「改革を進めざるを得なく」させるような財政政策、通貨政策にシフトするということはできないのでしょうか。
日本の場合は「余りにも改革が遅れた」状況にあるため、「改革で生産性が上がりすぎてデフレ効果が出てくる」ところに行き着くまでの、「生産性向上が全体の利益になる」ゾーンがまだ大きく残っているように思うからです。その意味で、イエレン議長やヒラリーの政策モデルは、日本のケースと少し違うのではないかと思います。
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