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ヒラリー「第二のメール疑惑」の誇大報道 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月1日 17時0分



 そこでFBIとしては、正式な捜査令状を取って合法的に「ウィーナー夫妻の個人メール」を閲覧できることになりました。アベディンはヒラリーの側近ですから、ヒラリーが「機密指定の情報を個人のメールサーバで扱っていた」ことの証拠が「アベディンのメール」などから証明できるかもしれない、というストーリーを組み立てたわけです。

 つまり、ウィーナーやアベディンの「メールボックス」にヒラリーのメールがあったり、例えばですが、一部の報道によれば「アベディンとヒラリーが『私的メールサーバ使用』に関わる証拠隠滅を図っている」という痕跡が出てきたりすれば、政治的にダメージを与えることができる、そんな期待感が、共和党筋にはあるというのです。

 そう考えると、この捜査はまったくの党利党略だという批判が出てくるのも自然な成り行きです。ただし、FBIのコミー長官にしてみれば、仮にウィーナーの「性的ツイート疑惑」の捜査絡みでPCの内容を調査していて、万が一「政治的に問題になる」ようなアベディンやヒラリーのメールが出てきた場合には大変なことになるので、その「万が一」に備えて、「投票日前」に「一応自分たちはこういう捜査はしていますよ」というアナウンスをする必要があったようです。

【参考記事】芸人的にもアリエナイ、トランプ・ジョークの末路

 要するに、今回の問題はFBIのコミー長官が「投票直前に選挙を歪めようとしている」というより(もちろん多少はそうした非難を受けても仕方ないにせよ)、ヒラリーと直接は関係ない事件で、直接は関係のない別人のメールを捜査しているという問題なのです。それにもかかわらず、各メディアが一斉に「スキャンダル再燃」とか「トランプがアベディンにありがとうと言った」などという誇大報道をしていることが問題です。

 一方で一部の報道では、反対に民主党サイドが、選挙直前の今週末までに、新たなトランプのスキャンダルを炸裂させる「仕込み」を準備しているという報道もあります。大統領選はこの最終盤でまったく油断ができない状況になっています。

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