貧困層の健康問題から目をそむける日本
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月2日 16時10分
健康問題の解決に税金を投じることに賛成する国民の割合も、他国にくらべて低い。「肥満防止の施策に税金を使う」ことへの賛成率は日本は40.6%で、これも主要国では最下位だ。
多くの国を含めた全体構造の中に、日本を位置付けてみよう。横軸に「貧困は健康問題の原因となると思う」、縦軸に「肥満防止の施策に税金を使うことに賛成」の回答率をとった座標上に、上記調査の対象34カ国を配置してみた。
日本は最も左下に位置している。健康問題を社会的な視野で考えようという意識が最も希薄な社会だ。
【参考記事】日本の公務員は先進国で最も少なく、収入レベルは突出して高い
おそらく、他の問題に対する考え方も同じではないだろうか。横軸の「健康問題」を「学力遅滞」、縦軸の「肥満防止施策」を「学力格差是正施策」に変えても、似たような傾向になりそうだ。
日本では、こうした問題の原因を当人の責任とする意識が強く、家庭環境のような外的条件に目を向けるのはタブー視されるきらいがある。アンケートで年収や学歴などをたずねようとすると、難色を示されることが一般的だ。これでは実態がわからず、不利な条件に置かれた人たちへの支援はおぼつかない。貧困に由来する、健康格差や学力格差の問題から目をそむけてはならない。
<資料:厚生労働省『国民健康・栄養調査』(2014年)、
International Social Survey Programme:「Health and Health Care - ISSP 2011」>
舞田敏彦(教育社会学者)
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