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なぜ中国は香港独立派「宣誓無効」議員の誘いに乗ったか

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月8日 17時57分



青年新政にとってはむしろ大成功

 だが事態はたんなる批判にとどまらず展開していく。まず香港政府は2人が基本法を遵守しなかったとして議員資格を喪失したと主張、裁判所に審査を申し立てた。行政が司法を通じて立法府の議員を排除する。三権分立を否定するかのような動きに出たのだ。裁判所の審査結果はまだ出ていないが、今度は中国の全国人民代表大会常務委員会が7日、「基本法104条に関する解釈」を決議した。

 宣誓は「誠実かつ荘厳に」「正確かつ完全に」行わなければならない、守らない場合には資格を喪失する、宣誓のやり直しは認められない――という内容だ。中国側は基本法の解釈権を行使したと主張しているが、梁頌恒と游蕙禎の2人を議員にさせないとの目的は明らかだ。高度な自治を認めた一国二制度が踏みにじられたとの見方が広がっている。

 かくして非親中派による大規模なデモが激化している。民主派からはあくまで平和的な抗議活動をするべきとの呼びかけが出ているが、青年新政や本土民主前線など独立派は民主派を「左膠」(クソサヨク)と批判し、道路占拠を呼びかけるなど勇ましい指示を発している。

 せっかく議員になれたのにあんな悪ふざけで議員の資格を失ってしまうなんてもったいない。普通ならばそう思うところだが、青年新政からしてみれば今回の騒ぎは決してマイナスではない。

 もともと立法院において独立派は2議席しか持っていない。まじめに議員をやっていてもたいした影響力は行使できないので、パフォーマンスで存在感を示すしか方法がない。悪ふざけのようなパフォーマンスこそが最大の仕事なのだ。ましてや今回は香港政府に三権分立を無視させ、中国に一国二制度を破らせることに成功した。相手に大きな汚点をつけ、香港市民の怒りをかき立てたのだから大成功と言えるかもしれない。

【参考記事】「政治冷感」の香港で注目を集める新議員、朱凱廸とは?

高級百貨店で白菜叩き売りの怪

 中国と香港は別物というのが独立派の主張だが、「パフォーマンスを武器にする」という発想は香港のみならず、中国本土でもよくある戦術だ。

 先日も友人からこんな写真(下)が送られてきた。場所は天津市の大手日系百貨店の7階レストラン街にある日本風洋食店だ。なんと入り口脇に白菜と大根が無造作に積まれ、叩き売りされている。友人によると、「白菜、白菜、白菜はいらんかね~」と呼び込みまでやっていたのだとか。高級百貨店の中で白菜(中国では安い物の代名詞として使われる)が売られているという異常な状況は多くの人の目を集めていたという。

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