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エリート主義から自転車を取り戻すために。「ジャスト・ライド」

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月11日 15時50分

 逆にまた、この本はドグマ化したレースの影響から自由になることを説いているのですから、この本自体を教条主義的に捉えてしまうことも、この本の趣旨に反するでしょう。受け入れるものと受け入れないものを自分で判断すればいいのです。

 個人的にいちばんハッとさせられたのは、短いライドは素晴らしいという主張でした。生半可にライドに慣れてくると、短いライドを軽蔑する傾向があるが、それは間違いだというのです。これは完全に僕のことです。休日に乗るなら100km以上は走りたいよねと思っています。時には夜明け前に走り出して、日没後に帰ってきたりします。

 でもグラント氏は、最近は4時間がリミットだと言うのです。あまりにも長いライドは人にストレスを与え、豊かな人生の時間を奪うのだと。乗ることの純粋なよろこびを感じられるのはずっと短いライドなのだと。これは素晴らしい大人の叡智といえます。

 別の観点からも、グラント氏は短いライドを推奨します。サドルに長時間座っていると陰部が麻痺するというよくある悩みに対して、ライドの時間を短くするのがいちばん効果的だと説くのです。そもそもそんなに長く座っていなければいいんじゃないかと。これには目からウロコでした。




 山登りにおけるウルトラライト・ハイキングのムーブメントには、必要以上の装備をすることで、山を歩くことの本来の楽しさを失うのはどうなんだ? 靴はズックでいいよ、楽に行こうよという温故知新的な意味合いがあったと思います。

 本書「ジャスト・ライド」にも共通した姿勢を感じます。自転車に乗るときの気楽で自由で解放された気持ちを取り戻そう、というメッセージがそこにあります。


○グラント・ピーターセン『ジャスト・ライド - ラディカルで実践的な自転車入門』(Pヴァイン)

※執筆:Geared(Facebookページ)


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ベルと一体化した自転車ナビ Blubel

川崎和哉(geared)


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