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天津爆発関係者死刑判決――習近平暗殺陰謀説は瓦解

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月14日 16時0分

 4.偽造書類の中には、たとえば危険物が梱包されているコンテナを保存する倉庫の面積が500平方メーターを越えた場合には、倉庫の建設場所は周辺の公共建築物や主要幹線道路から1000メートル離れていないといけないという規定があるが、この物流会社は、倉庫の面積が3622.2平方メートルもあるのに、申請書では541.84平方メートルと虚偽の数値を書き込んでいる。行政側はそれを承知の上で、収賄により不正を見逃している。

 5.またさまざまな評価委員会の申請書の中には、近隣住民の意見などを集めて書きこんだ書類が必要だが、賄賂を渡された評価会社などの「従業員」が「近隣住民」に成りすまして、危険物を扱うことになる物流会社に対して高い評価を書き込んでいた。

 ほかにもいろいろあるが、あまり多く書くと焦点が見えなくなってくるので控える。裁判ではこれら偽造書類の証拠が数多く提出され、関係者自身が贈賄・収賄や偽造書類作成に関する事実を認めた供述が、証拠物件とともにナマの声で報道された。

習近平暗殺陰謀説の矛盾と虚偽性

 この天津大爆発事故に関して、日本の一部では「これは習近平を暗殺するための陰謀だった」とする説があり、一定の関心を集めている。



 その習近平暗殺陰謀説論者が主張する根拠と、今般出された証拠との間の矛盾、および陰謀説論者の主張そのものの虚偽性を以下に列挙する。

 (1)陰謀説では、「習近平は大爆発があった翌日の2015年8月13日に、北戴河での会議を終えて、ちょうどこの爆発地点を通過して天津に向かうことになっていた。経路や時間帯に関しては極秘だが、習近平の身辺にスパイがいて、極秘情報を把握し、時間を合わせて習近平を暗殺しようとしていた」としている。しかし「8月12日夜半に決行してしまったのは、主犯者が時間を間違えたか、あるいは事件の大きさに恐れをなして、わざと時間をずらしたものと考えられる」などと書いている。この弁解はあまりに不自然で滑稽でさえある。ここまで大きな爆発事件を起こして習近平を暗殺しようとしているというのに「時間を間違える」というのはあり得ない話だろう。また、「わざと時間をずらした」という推論を裏付ける理由として、「威嚇のために」と書いているが、それにしては犠牲が大きすぎるのではないのか。実行犯も必ず死亡するし、これだけ多くの無辜の近隣住民に危害を与える必要はないだろう。これもまた、いかなる説得力もない。

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