インド発のAI、トランプ勝利を10日前に予測
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月14日 16時45分
大手マスコミや世論調査がヒラリー・クリントン氏有利を予想していたにもかかわらず、11月8日の米大統領選挙はドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。だが、インドの新興企業が開発した人工知能(AI)が10日以上前にの結果を正確に予測していたとして、注目を集めている。
ネットから情報収集して予測するAI
米CNBCが10月28日に報じたニュースによると、インドの新興企業ジェニック・エーアイ(Genic.ai)が開発した「MogIA」は、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブといったプラットフォームから2000万以上のデータポイントを分析。両候補に関連したネットユーザーの投稿を検討し、トランプ氏勝利を予測したという。
MogIAは2004年に完成。ジェニック社を設立したサンジブ・レイ氏によると、大半のアルゴリズムはプログラマーや開発者のバイアスに影響されるが、MogIAは膨大な情報環境から学習し、アルゴリズムのポリシー層で独自のルールを作って、あらゆるデータを捨てることなく専門システムを発展させているという。理論的には、データを処理すればするほど、予測の精度が高まるということだ。
実際、今回の共和党と民主党の各大統領選候補者を選ぶ予備選挙の結果を含め、大統領選関連の過去4回の選挙で、MogIAは結果を正確に予測していた。
トランプ氏勝利を示すデータの一例として、ネットユーザーのエンゲージメント(トピックに対する関わり)の比較で、バラク・オバマ氏が初当選した2008年のピーク時より、今回のトランプ氏が25%も上回っていたとのこと。
開発者も認める課題
もちろん、ネットユーザーから広く選挙に関する情報を集めて予測することの限界もある。ネット上で候補者に言及する人が有権者とは限らないし(未成年者の場合など)、選挙権があっても発言するだけで投票しない人もいるだろう。
こうした点はレイ氏自身も認識しており、先月の報道では、「もしトランプが負けたら、インターネットのエンゲージメントを分析してきた過去12年間で初めて、データのトレンドを否定する結果になる」と弱気な発言をしていた。
広がりを見せるAI予測
MogIAのほかにも、さまざまな分野でAIによる予測が的中した例が報じられている。今年5月には、米国の競馬「ケンタッキー・ダービー」で、「UNO」というAIシステムが四連単(1〜4着に入る馬を順番通りに当てる)を見事的中させた。UNOは過去にも、スーパーボウルの勝者やアカデミー賞の受賞者の予測に成功しているという。
また、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究により、欧州人権裁判所の司法判断は、AIが79%の精度で事前に予測できることがわかったという。
アニメ『ザ・シンプソンズ』も予言的中
最後に余談めくが、米国の人気アニメ『ザ・シンプソンズ』も、2000年3月に放送したエピソードで「トランプ大統領」を登場させていたとして、ネット上で賑わっている。
このエピソードを執筆したダン・グリーニー氏は当時を振り返り、「(トランプが大統領になるのは)最悪の時期を迎える前の合理的な終着点に思えた。アメリカへの警告だった」とコメントしている。
高森郁哉
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