リーダーは「データ」より「目的意識」を重視せよ
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月15日 18時41分
こうした「正しい行為」は、良いリーダーシップを象徴する。そこには「なぜ私たち1人ひとりは、この世界に存在するのか?」と自問することで生じる目的意識が存在する。VUCAの世界でうまく立ち回ることのできるリーダーは、こうした目的意識を広めるのに長けている。複雑性を巧みに手なずけられるのだ。
私たちのクライアントのある銀行の技術サポート部門は、仕事のストレスが原因となって退職者が相次ぐという問題を抱えていた。部門長は、ある日のチームミーティングで暗闇を怖がる4歳の息子の話をした。子ども部屋のドアを少し開けておくと、廊下の光で安心するのだという。そして彼はこんなことを言ったのだ。「サポートを依頼する人は不安で緊張している。そこで私たちが廊下の光のような安心感を提供する。それが私たちの存在理由だ。技術的な問題を解決することじゃないんだ」
このミーティングをきっかけに、退職者は減っていったという。チームは、仕事の目的意識を見つけられたのだ。それが仕事を血の通ったものにした。
目的意識は、まさに組織の存在理由であるともいえる。目的意識こそが、組織が世界とつながり、長期間繁栄を続けていけるかどうかを決定づけるのだ。しかし、ほとんどの組織は、そもそも初めから目的意識を欠いているか、忘れてしまっているかのどちらかなのが現状だ。ならば、埋もれている目的意識を掘り起こさなくてはならない。
その「見えなくなっている目的意識」を表に出すために、リーダーは人の話や、人の行為によって起こった現象、人のものの見方やアイデアなどを集める必要がある。誰かに目的意識を定義してもらうのではなく、集めた材料を使って間接的にアプローチするのだ。
集まったところで、最初のステージに立つことができる。このステージでは2つの「対話」が求められる。1つめは"心を動かす"対話。これは組織に所属する人々が組織に対してどのような感情を抱いているかを調べるためのものだ。そして2つめは"意義を見出す"対話で、組織とそれに関連するストーリーを抽出する。
この2つの対話を経てはじめて、次の"力を引き出す"対話に移ることができる。これは、実際にどのようにすれば目的意識をもってもらえるかの答えを見つけるための対話だ。このステージの対話は戦略的になる。全員がはっきりと目的意識に目を向け、自分が何をすればよいのかを理解させるためのものだからだ。
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