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トランプとスペインの急進左派政党ポデモスは似ているのか

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月17日 16時40分

右派ポピュリズムを止められるのは左派ポピュリズムだけ?

 エル・パイス紙は、ポデモスとトランプは3つのタイプの似たような支持者を獲得していると書いている。

 1.グローバル危機の結果、負け犬にされたと感じている人々。
 2.グローバリゼーションによって、自分たちの文化的、国家的アイデンティティが脅かされていると思う人々。
 3.エスタブリッシュメントを罰したいと思っている人々。

 「品がない」と言われるビジネスマンのトランプと、英国で言うならオックスフォードのような大学の教授だったイグレシアスが、同じ層を支持者に取り込むことに成功しているのは興味深い。

 マドリード自治大学のマリアン・マルティネス=バスクナンは、ポデモスとトランプが相似している点は「語りかけ」だと指摘する。「トランプには理念があるわけではなく、彼の言葉は、ヘイトや、オバマ大統領が象徴するすべてへの反動に基づいています。人々の感情を弄び、極左や極右がするように、共通のアイデンティティを創出しようとします。問題は、人々の情熱がどのように利用されているかということなのです」と彼女は話している。

 感情と言葉の側面については、英国のオーウェン・ジョーンズもこう書いている。

プログレッシヴな左派は、ファクトを並べて叫べば人々を説き伏せることができると信じている。だが人間は感情の動物だ。我々は感情的に突き動かされるストーリーを求めている。一方、クリントンの演説は、銀行幹部の役職に応募しようとしている人のように聞こえた。(略)

左派も感情を動かすヴィジョンを伝えなければならない。ただ事実を述べてわかってくれるだろうと期待しているだけでは、右派の勢いを鈍らせることも、プログレッシヴな勢力の連合も築けないとわかったのだから。

出典:"The left needs a new populism fast. It's clear what happens if we fail" Guardian : Owen Jones

 ポデモスの幹部たちは「右派ポピュリズムを止められるのは左派ポピュリズムだけ」と言ったベルギーの政治学者、シャンタル・ムフに影響を受けているという。エル・パイス紙によれば、スペインは欧州国としては珍しく、英国のナイジェル・ファラージのUKIPや、フランスのマリーヌ・ル・ペンの国民戦線のような右派ポピュリズムがまだ出現していない。

 ちょっと希望の押し付け過ぎではないかとも思うが、オーウェン・ジョーンズが「ポデモスが崩れたら欧州の左派に未来はない」と言うのも、右派ポピュリズムへの抑止力として機能している左派ポピュリズムが他に見あたらないからだろう。

[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。著書に『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(太田出版)、『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)、『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

ブレイディみかこ


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