甘酒......心の傷まで治してくれる、飲む点滴・甘酒
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月19日 7時0分
私は生家が福島県の麴屋だったせいもあり、上京して何十年になりますが、今でも甘酒は手作りしています。好きなのは、ちょっと発酵が進んで少し酸っぱくなった甘酒。つまり乳酸菌の多い甘酒で、私にとってはヨーグルトのような存在です。その甘酒を3日に1回はこまめに手作りして、毎朝、大ぶりの湯飲み茶碗1杯飲んでいます。そのせいか、飲んでしばらくすると腸が動いて、便意があります。ですから、私は便秘に苦しんだことはありません。
ヨーグルトなど腸にいい乳酸菌飲料には女性ファンが多いようですが、甘酒はそれら以上に体にやさしい飲み物。肌の艶が落ちてきた中年女性、冷え性に苦しむ女性、体力が衰えてきた中高年に飲んでいただきたい発酵食品です。買うと高いので、酒粕でも作れる甘酒を手作りしましょう(作り方は212頁で紹介)。
まとめて作っておく場合、人肌よりもちょっと高めの温度で一晩寝かせると、甘みの強い甘酒になるので、冬は3〜4日、夏は2日で飲みきってください。やわらかめのご飯に混ぜれば、さらにおいしいご飯になります。
最後に、胸にしまっておいた、甘い甘酒の酸っぱい思い出。
小さな子どもを残して妻が亡くなり、極貧の中、4畳半で親子二人暮らしていたパッとしないマンガ家時代です。夏なのに、団扇だけのむし暑い4畳半で暮らす子どもの体が心配で、なけなしの金をはたいて酒粕を買い、冷やし甘酒を作りました。
アパートの近くの広ッ原で、置かれていた古タイヤに座り、夜空の星を見上げながら子どもと飲んだ冷たい甘酒。「とうちゃん、おいしいね。おかあちゃんもいたらよかったのにね」と子どもがいい、私は、「おかあちゃんはお星さまになって、きっと、お空の上で飲んでいるよ」と涙ぐみました。見上げる夜空で大きな星が明るく輝くと、スーッと流れて消えました。
甘くて体にやさしい甘酒は、心の傷にも効く点滴なのです。
※シリーズ第5回:主食以外の自分流サプリメントを、毎日必ず食べる
『ひと月1万円!体にやさしい
昭和のシンプル食生活』
永山久夫 著
CCCメディアハウス
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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