流行語大賞から1年、中国人は減っていないが「爆買い」は終了
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月19日 6時57分
一方で、外国人専門のクローズド免税店は堅調と伝えられる。こうした店について知る人は少ないだろう。予約した外国人ツアー客以外はお断りという名目で日本人の出入りが禁止されている。かつて上海租界の公園には「犬と中国人は入るべからず」との看板がかけられていた。恥辱の中国近代史の象徴として今も記憶されている。21世紀の今、日本に「日本人入るべからず」のお店ができているのはなんとも皮肉だ。
こうした免税店は、中国の旅行会社にマージンを支払ってツアーをまるまる招き入れる形式だが、交通が不便な場所にあることが多く、旅行客は他店と見比べることもできないまま店員のマシンガンのようなセールストークを聞き続けることになる。中国旅行会社のツアーには、こうした軟禁スタイルのボッタクリ免税店、土産物店がつきもの。中国国内だけではなく、ヨーロッパやオーストラリアなど海外でも整備されている。
【参考記事】香港・マカオ4泊5日、完全無料、ただし監禁――中国「爆買い」ツアーの闇
ツアーに参加する客はこうした苦行があることを知らない情報収集力が低い人か、あるいは知っていても個人旅行は面倒だと考える人たち。売り込みにも弱く格好のカモなのだという。
もっとも、日本のボッタクリ免税店については中国メディアでもたびたび報道され、その悪辣ぶりは次第に認知されつつある。いつまで勝ち組でいられるかは不透明な状況だ。
いずれにせよ、昨年から今年にかけての急変も驚きだが、今後もめまぐるしい変化は続くと予想される。なんともやっかいなマーケットだが、社会現象となったクレイジーな「爆買い」は終焉しても、中国人観光客のインバウンド需要が消えるわけではない。「爆買い」から普通のインバウンド需要に戻るだけだ。
長い目で見れば、中国人の可処分所得上昇と海外旅行需要が続くことは間違いないだけに、成熟した需要が堅調に伸びることは間違いない。インバウンド産業には短期の変化に一喜一憂しない、長期的な視点が求められている。
【参考記事】日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします
[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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