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「ドイツによる平和」の時代へ

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月25日 10時30分

「(今回の米大統領選は)警鐘になるだろう。ヨーロッパは目を覚まし、自立しなければならない」。ドイツのシンクタンク、フリードリッヒ・エーベルト財団の国際政治専門家ミヒャエル・ブレニングはそう指摘する。

 ドイツのウルズラ・フォンデアライエン国防相は、トランプの勝利がEUの軍事力拡大や体制強化を促進する「起爆剤」になると発言した。「自由民主主義の防衛が最優先課題」であり、「EUは外交・軍事面でより大きな責任を担わなければならない」という。一度はお蔵入りした「EU軍」構想も再び持ち上がっている。



 世界各地では反リベラル派が猛威を振るっている。ヨーロッパでも、ポーランドやハンガリーが右派色を強めるなか、ドイツは今後、欧米同盟の価値をアピールする上でも主導的な役割を果たすことになるだろう。

 ジャーナリストのアラン・ポズナーに言わせれば、次期米大統領に対するメルケルのメッセージは、実はヨーロッパに向けたものだった。「トランプと取引する上で、われわれの価値観を捨ててはならないという訴えだ」。例えば、ウクライナ問題でトランプがロシアのウラジーミル・プーチン大統領と手を結ぼうと、ヨーロッパはウクライナを見捨ててはならない、と。

 メルケルが述べたメッセージには、ロシアが影を落としている。非民主主義的なロシアが、リベラルな価値観を軽視するようになったアメリカの支持を得れば、ヨーロッパの民主主義は厳しい圧力にさらされるのではないか。ヨーロッパはその点に神経をとがらせている。

【参考記事】中国企業の買収攻勢に警戒強めるドイツ

 ドイツはもはやアメリカの弟分ではない。とはいえ安全保障をはじめ、さまざまな面でアメリカに頼り、国防問題や国際社会での役割について難しい決断を下すことを回避してきた。

 フォンデアライエンによれば「ブレグジットと米大統領選はヨーロッパの針路を変えた」。果たして、どこへ向かうのか。メルケルら首脳は今、進むべき道を必死に模索している。

[2016.11.29号掲載]
ポール・ホッケノス(ジャーナリスト)


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