トランプ勝利を歓迎するトルコのエルドアン大統領
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月28日 17時30分
ラッカにおける対IS作戦を見据える両国
最後にシリア内戦をめぐる現在のトルコとアメリカの関係についても触れておきたい。以前このコラムでも触れたように、トルコは今年の8月24日以降、シリアにおいてISの排除とPYDおよびYPGの勢力拡大阻止を目指し、「ユーフラテスの盾」作戦を実施している。ISの排除という点に関しては、トルコおよびトルコが支援する自由シリア軍、アメリカ、ロシア、PYDおよびYPGも利害が一致している。そして、現在焦点となっているのは、ISの本拠地、ラッカ攻撃に際し、上記したアクターが足並みを揃えることができるかという点である。
【参考記事】トルコはなぜシリアに越境攻撃したのか
エルドアン大統領は、当初、「テロ組織とは共闘できない」として、PYDおよびYPGとの共闘に難色を示した。しかし、11月6日にアンカラでトルコのフルス・アカル統合参謀総長とアメリカのジョセフ・ダンフォード統合参謀総長が4時間半にわたり会談し、両国がラッカ攻撃で協力することで合意した。
ここでは、(1)PYD、YPG、YPGとアラブ人からなるシリア民主連合(SDF)というトルコがPKKと同一視するクルド勢力がラッカを占領することにアメリカは同意しない、(2)自由シリア軍とトルコ軍が展開しているアル・バーブにおけるアメリカの支援、(3)北イラクのニーナワー県スィンジャールへのPKKの進出の阻止、が確認された。このように、両国はラッカの対IS戦に向け、クルド勢力の処遇に関してわだかまりを残しつつも一応足並みは揃えた。
トランプの大統領就任とラッカの対IS戦に向けたアメリカとの協調は、トルコの外交にとって追い風となっているように見える。しかし、いまだにトランプ政権の外交は不透明な部分が多く、しばらくの間、両国関係は手探りの関係が続くことになるだろう。
【参考記事】注目のキーワード:トルコ
今井宏平(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
クルド有力政治家に禁錮刑 トルコ裁判所、デモ扇動罪
共同通信 / 2024年5月17日 5時8分
-
経済の視点から考える「イランvs.イスラエル」対立の行方【マクロストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月11日 8時0分
-
イスラエルのガザ攻撃を止めるにはどうすべきか…中東で100年以上も泥沼の戦争が繰り返される理由
プレジデントオンライン / 2024年5月4日 10時15分
-
トルコ大統領がイラク訪問、安保協力や経済関係強化で合意
ロイター / 2024年4月23日 10時4分
-
トルコ大統領、イラクを訪問 13年ぶり、対PKKで要請
共同通信 / 2024年4月23日 6時49分
ランキング
-
1「社会へ強いメッセージを伝える人に与えられる」“建築界のノーベル賞”プリツカー賞授賞式に山本理顕さん出席 日本人9人目の快挙
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月19日 11時13分
-
2イスラエル 政権内の亀裂深まる、戦時内閣メンバー・ガンツ前国防相 ネタニヤフ政権に戦闘終結後のガザ統治など行動計画要求「策定しなければ離脱」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月19日 12時27分
-
3ロシア、ハリコフ州でさらに1集落制圧=ウクライナ北東部、1万人避難
時事通信 / 2024年5月19日 8時26分
-
4イスラエル軍、ガザ北部ジャバリヤ侵攻「これまでで最も激しい戦闘」…戦闘員200人殺害と主張
読売新聞 / 2024年5月18日 22時7分
-
5敵前上陸「地上の地獄だった」 対ロシア渡河作戦、兵士ら証言
共同通信 / 2024年5月19日 20時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください