警官の集団墓地、石打ち、化学兵器──ISIS最大拠点モスルの惨状
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月1日 18時47分
<イラク政府軍などの猛攻でISISが追いつめられるにつれて、「イスラム国」の恐怖の実態が明らかになってきた>
イラク政府軍がテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の拠点であるイラク北部の都市モスルに対する奪還作戦を始めて数週間、残酷なISISの支配下で起きた恐るべき実態が明らかになってきた。
集団墓地で300人に上る警察官の遺体が発見され、化学兵器の使用も伝わるなど、ISISに支配された住民が強いられてきた恐怖は想像を絶する。その上イラク軍の攻勢を受ける今は、その侵攻を妨げるために住民らを強制移動させて「人間の盾」として使っている。
【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復
「ここ2年は悪夢のなかを生きている」と、モハメド(仮名)はモスルでの生活について語った。過去に一度だけ、イスラム教が禁止する性行為(ジナ)を行なった夫婦に対する公開の石打ち刑を強制的に見せられたことがある。
「今もあの時の光景が脳裏に焼き付いている。顔をベールで覆った女性の頭部に石がぶつかり、頭から血が噴き出ていた」
【参考記事】イスラム女性に襲われISISがブルカを禁止する皮肉
化学兵器と知らずに水で洗った
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルがイラク北部で3週間かけて実施した調査で、ISISが支配していた町や村から逃げ出してきた住民は、誰もが恐怖に満ちた経験をしていた。
ある男性は、当時居住していたモスル東部にある通りで、ISIS戦闘員が軍事車両のハマーを標的に自爆攻撃を仕掛けてきたときの光景について語った。「爆発の衝撃で、家にあった冷蔵庫が部屋の端まで飛んだ。近所の家は崩壊し、家の中まで押しつぶされた。瓦礫の間に人の肉が見えた」
モスル南部にある町ケイヤラでは、10月6日にISISが化学兵器を使用したとアムネスティは主張する。目撃者の証言によると、ニンニクや玉ねぎのような匂いで、黄色っぽく油のような液体が地元のカフェや民家に発射された。被害者は目の炎症や呼吸困難やかゆみに苦しみ、皮膚が赤くなり最後にはただれた。そうした症状について、アムネスティが調査を依頼した化学兵器に詳しい2人の専門家は、硫黄マスタードガスを浴びた後の症状と一致することを確認した。
【参考記事】米軍に解放されたISの人質が味わった地獄
4歳の女の子は親戚の家の庭で化学兵器による攻撃を受けた。「化学兵器とは知らず、水で洗ってあげただけだった」と父親は言う。「すると翌日、皮膚がただれはじめた。最初は小さかった患部が次第に大きくなり、ひどく痛がった」
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
“隠れた報復”進むヨルダン川西岸占領地 聖地で探ったユダヤ人入植者の本音、なぜ土地に固執、過激化するのか?
47NEWS / 2024年7月11日 10時0分
-
イスラエル軍の指揮統制の問題が浮き彫りに...最も明確に表れた3つの事例
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月9日 15時0分
-
ウクライナが核攻撃されれば米国はどう報復するか 通常兵器で直接攻撃も、ロシアの演習で高まる緊張
47NEWS / 2024年7月8日 10時30分
-
焦点:ガザ戦後統治は誰が担うのか、イスラエルを悩ます難問
ロイター / 2024年7月5日 18時31分
-
イランで核兵器取得論争が活発化~イスラム体制の形骸化招く可能性も
Japan In-depth / 2024年6月29日 18時4分
ランキング
-
1バイデン大統領、米大統領選からの撤退を表明 代わりの候補としてハリス副大統領を指名
日テレNEWS NNN / 2024年7月22日 3時30分
-
2バイデン氏の決断尊重 英や独首相ら
共同通信 / 2024年7月22日 11時54分
-
3米民主重鎮、決断を称賛=ハリス氏支持で対応分かれる―バイデン氏撤退
時事通信 / 2024年7月22日 9時50分
-
4《トランプ前大統領銃撃事件で使用》「全米で広く出回る」AR-15ライフル、日本の暴力団が「使わない」理由
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 16時15分
-
5大統領警護隊、警備強化を拒否 トランプ氏側が複数回要請
共同通信 / 2024年7月22日 0時36分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)