民族大虐殺迫る南スーダン。国連安保理の武器禁輸措置決議になぜ日本は消極的なのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月7日 17時45分
南スーダンは12月から乾季を迎える。雨季では十分な戦闘が難しいため、乾季は戦闘シーズンと言われている。時間は限られている。そして、1月になればトランプ政権となり、国連外交の先は全く読めなくなる。。。危険な情勢である。
国連安保理で争点となっている武器禁輸、紛争指導者の資産凍結等
こうしたなか、焦点となっているのが、南スーダンへの武器禁輸、紛争指導者(政府高官、反政府リーダー双方)の資産凍結等の措置である。
率直に言って、国際社会はもっと早く、こうした措置を講じるべきだった。
なぜいつも民族浄化を止められないのか、世界のリーダーが手をこまねいて何らリーダーシップを発揮できないまま人々が殺されていく過去の教訓にいつになったら真摯に向き合い、早期に適切な行動をとることになるのか、と感じざるを得ない。
しかし、それでも今からでも武器禁輸措置を講ずることは命を救うことになると、現地ジュバの市民社会は声をあげている。「このままではジェノサイドになる可能性がある」と。
こうしたなか、11月30日、アメリカ政府(サマンサ・パワー大使)はニューヨーク国連本部で開催されている安全保障理事会に、武器禁輸等に関する国連安保理決議を提出しようとしたが、断念を余儀なくされた。
なぜかといえば決議採択に必要な国連安保理のなかの9票を得られる見通しが立たなかったからだという。
現在の安保理メンバーは、
米、英、仏、露、中の常任理事国に加え、
アンゴラ、エジプト、日本、マレーシア、ニュージーランド、
セネガル、スペイン、ウクライナ、ウルグアイ、ベネズエラ
である。
なぜ、米国が断念したか、ニューヨークのNGO関係者に聞いてみたところ、ロシア、中国、ベネズエラやアフリカ諸国が乗り気でないだけでなく、日本やマレーシアのような国からも賛成を得られなかったからだという。
フォーリン・ポリシーのコラムに詳しく記載されているが、そこでは、「自衛隊を派遣している日本は南スーダン政府と対立したくない」と分析されている。
私が交流のあるニューヨークの安保理界隈の人々の間では、「自衛隊を派遣している日本にとって、『ジェノサイドの危険性があるなどの深刻な治安状況を確認する決議は避けたいのではないか?』」「自衛隊派遣に対して否定的な影響を避けたいのではないか」「しかし、武器禁輸をしないほうが、自衛隊は危険にさらされるではないか? 」などの憶測と疑問が流れている(日本政府の意図はわからない)。
この記事に関連するニュース
-
米国務省、2023年人権報告書を公表、イスラエルとハマスの衝突は「人権に関する深刻な懸念」(米国、イスラエル、イラン、ロシア、ウクライナ、スーダン、中国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月23日 13時40分
-
スーダン:戦闘開始から1年——緊急かつ迅速な人道援助の拡充を
国境なき医師団 / 2024年4月15日 19時1分
-
戦闘開始から1年、スーダンの人道危機が手遅れになる前に
PR TIMES / 2024年4月12日 16時15分
-
[社説]ガザ戦闘半年 国際世論喚起し停戦を
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月8日 5時0分
-
ユニセフ、安保理に対し行動呼びかけ~ガザ・スーダン・ミャンマー等、紛争下の子どもの窮状訴え【プレスリリース】
PR TIMES / 2024年4月5日 11時45分
ランキング
-
1ロシア、化学兵器使用か 米が制裁強化
AFPBB News / 2024年5月2日 15時18分
-
2ラファ侵攻の方針譲らず イスラエル、強硬姿勢維持
共同通信 / 2024年5月2日 23時9分
-
3ロンドン市長選の投票実施 開票は4日、3選目指すカーン氏に「排ガス規制」のアキレス腱
産経ニュース / 2024年5月2日 16時28分
-
4日本経済低迷の理由、バイデン氏「外国人嫌いで移民望んでいないから」…移民受け入れの利点強調
読売新聞 / 2024年5月2日 17時54分
-
5トルコ政府、イスラエルとの輸出入を“全て停止”と発表 「パレスチナにおける人道的な状況がさらに悪化」のため
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月3日 9時53分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください