タイム誌「今年の人」はトランプも呪う?
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月8日 16時14分
その翌年、スターリンは再びタイムの今年の人に選ばれたが、その後も3年間むごたらしい戦争が続いた。しかも彼の死後、後継者のニキータ・フルシチョフがスターリン批判をぶち上げ、個人崇拝と独裁の実態を世界に暴いた。
1940年には、タイムはウィンストン・チャーチルに栄誉を与えた。野に下っていたチャーチルは、この年イギリスの首相に就任。だがその後、ドイツの潜水艦Uボートに手を焼き、イギリス軍はギリシャのクレタ島から撤退、エジプトまで失いそうになった。しかもマレー沖の海戦で日本軍に第一級の戦艦2隻を撃沈された。チャーチルによると、この時が戦争で最悪の時期だったという。ようやく平和が訪れた45年の総選挙では有権者にノーを突きつけられ首相の座を降りた。
1971年と72年、タイムはリチャード・ニクソンを今年の人に選んだ。その後の2年間、米政界はウォーターゲート事件に揺れ、ニクソンは74年、「任期中に辞任した唯一のアメリカの大統領」という不名誉な記録を残してホワイトハウスを去ることになった。
爆発前の最後の輝き?
2011年の人は「抗議する人」――「アラブの春」やロシアで束の間盛り上がった反政府デモなど、世界各地で起きた民主化運動の担い手たちだ。ロシアでは翌年大統領に返り咲いたウラジーミル・プーチンが反政府派の息の根を止め、強権支配を固めた。エジプトは軍事独裁政権の支配下に戻り、シリアは長引く内戦で壊滅状態に追い込まれ、チュニジアはテロリストの供給源となり、イエメンは世界から忘れ去られた内戦と飢餓にたたられている。
こう見てくると、タイムの今年の人が放つオーラは、超新星爆発のようなものらしい。壊滅的な自己破壊に向かう直前の、最後のまばゆい輝きというわけだ。トランプも今が絶頂ということかもしれない。
From Foreign Policy Magazine
エミリー・タムキン
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