コンゴのデモ弾圧は、数百万人が死んだ内戦再燃の前触れだ
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月22日 16時56分
9月にはキンシャサで、大統領選の実施が遅れたことに反対する大規模な抗議集会が治安部隊との衝突に発展し、50人以上が死亡した。その二の舞になるのを懸念して、国際社会は反政府勢力に対し、もしこれ以上死者が出る事態になれば反政府派の指導者が責任の大半を負うことになると畳みかけ、群衆へ平静を呼びかけるよう圧力をかけた。「それには反政府派の指導者も意表を突かれた。外交官らは国際刑事裁判所という固有名詞まで持ち出してきた」と、反政府派の指導者は打ち明けた。「もちろんチセケディは群衆に対して、家から出るなとは言えない。そんなことを言ったら我々の立場がなくなる。だから沈黙を保つという結論に至った」
とはいえ20日には、全国で数百人規模の群衆が抗議デモに姿を現した。人々は一晩で通りにバリケードを張り、キンシャサと南部の銅山都市ルブンバシでは小規模のグループが抗議集会を開こうと集まった。だがすぐに警察や治安部隊が催涙ガスや実弾を発射し、デモ参加者は追い払われた。国連によると、全国で100人以上が逮捕され、キンシャサだけで少なくとも22人が死亡した。サッカーの審判が使う「レッドカード」を思わせる赤色の服を着用して笛を吹きながら街に繰り出すなど、もっと巧みな手法を用いて抗議する人々もいた。
勢いをそがれた反政府運動
だが20日のデモは、これまで反政府派が脅してきたほど大勢の参加者を集めるには程遠く、むしろ沈黙が際立った。これにより、カビラは権力の座を阻まれる脅威を、ひとまず乗り切ったかもしれない。「通りでデモを行うことは、反政府派に残された唯一の手段だった。民主的なプロセスという観点からすれば、非常にまずい兆候だ。もし人々が通りに出るのをやめれば、カビラは反対派の動きを気にもかけなくなるだろう」と、ニューヨーク大学の国際協力センターでコンゴ研究グループを指揮するジェーソン・スターンズは言った。
ここ数ヶ月で、反政府派の運動の余地は急速にしぼんでいる。大方の原因は、彼らの強硬で非現実的な戦略だ。その頑固ぶりを証明するのが、11年に実施された大統領選をめぐるエピソードだ。カビラの有力対抗馬だったチセケディは、まだ開票作業が終わってもいないのに、勝手に勝利を宣言した。集計でカビラの勝利が明らかになった後も、チセケディは結果の受け入れを拒み、自ら大統領だと名乗った。選挙監視団は不正があったと指摘したが、結果を待たずに勝利宣言するという非常識な行為が仇となり、選挙結果は覆らなかった。
今コンゴで起こりつつあるのは、民主化移行の本当の終わりだ。数十年に及ぶ流血の内戦の後、2003年にやっと勝ち取ったプロセスだ。カビラがそれだけの権威を確立したというわけではない。任期制限に逆らって権力の座に居座ったサブサハラの他の指導者と違い、カビラは西欧全体と同じ大きさがあるコンゴをすべて支配できているわけではない。もし抗議デモが今すぐカビラの脅威にならないとすれば、いずれ各地で政府軍と戦い人数を増やしつつある反政府武装勢力がカビラを脅かすだろう。
1998~2003年まで続いた第2次コンゴ戦争による死者は推定で100万~500万人にのぼる。カビラ統治の正当性が任期切れと共に崩壊すれば、コンゴは民主化よりはるかに大きな犠牲を払うことになりかねない。
From Foreign Policy Magazine
メラニー・グヴィ
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