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少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」──カメルーン出身の被害者語る

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月5日 19時30分

 そうした行為を、単に宗教や文化的な動機に基づく女性への暴力行為として記録する警察当局のやり方は生ぬるいと、ベリーは主張する。イギリスでは1985年以降、FGMには特定の刑事罰を科し、2015年に厳罰化もした。



「下院で演説してからは、主要都市の警察と緊密に連携し問題に取り組んでいる」とベリーは言う。「警察側はその慣習がイギリス国内で行われていることに、手探りながら気づいている」

 英内務省は本誌の取材に対し、胸アイロンは児童虐待に該当するため「違法」だと回答した。同省のサラ・ニュートン政務次官は、政治的もしくは文化的な配慮が、この慣習を未然に防ぎ実情を暴くうえでの「妨げになってはいけない」と言った。

 女性と少女のための英チャリティ組織で胸アイロンの被害者を支援するCAMEの共同創設者マーガレット・ニューディワラは、主にロンドンやバーミンガムといった都市部で西アフリカ出身者のコミュニティーが拡大していることから、イギリスにおける被害件数が今後も増えそうだとみている。内務省のデータによると、2001~2015年の間に6972人のカメルーン出身者が、亡命もしくは市民権を得てイギリスへ移住した。

光を当てよ

「痛みとトラウマの両方を一度にもたらす手順は残忍で、大人になっても被害者の人生に悪影響を及ぼす」とニューディワラは言う。「当事者は娘を守るつもりで、良かれと思ってやっている。だがその行為は有害だ。子どもは数カ月にわたり日々の虐待を耐え忍び、英当局は見知らぬ文化に介入するのに及び腰だ。CAMEは英国内で胸アイロンの被害に遭っている少女が1000人規模に上ると推計している」

 処置の方法は様々だ。ビッキーが経験したように熱した葉っぱを胸に押し当てたりマッサージに使ったりする場合もあれば、焼いた砥石を使って発育期にある乳腺を潰すケースもある。少女の心理的な傷痕は深く、長い時間を経ても消えない。性に関するコンサルタントでカメルーン人のアワ・マグダレンによると、そうした慣習は「少女がその後の人生で、社会で自己主張するのに必要な自信を奪い去ってしまう」

 胸アイロンを失くすための第一歩は、FGMの場合と同様、できるだけ広くその存在を世に知らしめ、理解を広めることだと、ベリーは言う。声に出して話し合わなければ、胸アイロンはまた元の闇に葬られてしまうだろう。




ルーシー・クラーク・ビリングズ


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