排気ガスを多く浴びると認知症になりやすい? カナダ研究機関の調査結果で
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月6日 14時40分
<カナダの研究機関の調査で、「交通量の多い」道路の近くで生活している住民の認知症の発症率が一般より12%も高い、という結果が>(写真:排気ガスに煙るインド・デリーの道路)
「交通量の多い道路の近くで暮らすと認知症のリスクが高まる」――カナダの研究機関が公表した調査結果が、生活環境と認知症の関係で新たな議論を呼んでいる。
医学雑誌ランセットのサイトで今週公表されたこの調査では、カナダの研究機関「パブリック・ヘルス・オンタリオ」が、2001~2012年の期間、オンタリオ州在住の住民約660万人を対象にして、住居と道路の間の距離と、認知症、パーキンソン病、多発性硬化症の発症率の関連を調べた。
その結果、交通量の多い道路から50メートル以内に暮らす住民は認知症を発症する割合が一般住民より7%高く、50~100メートルでは4%、101~200メートルでは2%高かった。200メートル以上離れて住んでいる人には発症率の上昇は見られなかった。
特に都市部で、調査期間中ずっと主要道路から50メートル以内で生活している人では、認知症の発症率が12%も高かった。割合は小さいが明らかにリスクは高くなっている。
パーキンソン病や多発性硬化症の発症率には、道路の近くに住んでいることとの関連は認められなかった。
【参考記事】インドのデリーを覆った「有毒ガス」の正体
これまでにも、大気汚染や車の通行による騒音が、脳内の白質を委縮させて認知機能を低下させることは指摘されている。
今回の調査では、排気ガスが脳に有害な影響を与えるかどうかまでは断定できなかった。排気ガス以外の都市環境に起因する不健康なライフスタイルによって心肺機能が低下し、結果として認知症の発症率が高まった可能性もある。
このため専門家の見解は分かれている。都市部での大気汚染の重大さを指摘する調査結果だという評価もあるが、一方で交通量以外の生活環境が調査結果に関係している可能性が残っているからだ。
しかし調査を実施した研究チームのメンバー、レイ・コープスは、この結果を考慮して、都市部の住民は、脇道を歩いたり、公園でジョギングしたり、交通量の少ない道をサイクリングしたりして排気ガスを回避する選択ができるとアドバイスしている。さらに「都市計画の段階で、住民に排気ガスに多くあたらないように街をデザインすることが必要だ」と、話している。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
この記事に関連するニュース
-
火災による大気汚染が原因の死者、年間150万人超 論文
AFPBB News / 2024年11月28日 15時48分
-
「高齢者が積極的に運転免許を返納する必要はない」…意外と知られていない"高齢のドライバー"をめぐる現実
プレジデントオンライン / 2024年11月28日 10時15分
-
がんでも脳卒中でも心筋梗塞でもない…75歳以上の8割が5年以内に死亡する「寝たきりを招く病気」の名前
プレジデントオンライン / 2024年11月28日 9時15分
-
「階段上れない」「せきがとまらず」 健康被害続出のニューデリー、大気汚染今年も深刻 世界行動学
産経ニュース / 2024年11月27日 7時0分
-
大気汚染のインド首都で工事禁止 学校はオンライン授業
共同通信 / 2024年11月18日 16時42分
ランキング
-
1ロシア軍、ウクライナのエネルギー施設に大規模攻撃…100万以上の世帯が停電か
読売新聞 / 2024年11月29日 11時51分
-
2ゼレンスキー氏が「戦争税」法案に署名 戦時下で初の増税へ
ロイター / 2024年11月29日 9時46分
-
3プーチン氏、メルケル氏が「犬が怖いと知らなかった」…会談に愛犬伴ったことを謝罪
読売新聞 / 2024年11月29日 10時9分
-
4ウガンダで地滑り、15人死亡 113人不明、豪雨原因か
共同通信 / 2024年11月29日 8時47分
-
5アングル:ロシア国内で深刻化する人手不足、軍や防衛産業が働き手吸収
ロイター / 2024年11月29日 14時3分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください