やはりマニラは厳しい都市だった
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月10日 17時0分
何か虚構の、つまり映画か何かのVRみたいなものに入り込んだような気に俺はなりつつ、ジョーダンの優しげな笑顔(キアヌ・リーブス似)にも魅入られながら彼らの導く部屋へついて行った。
そもそもミッションに夫婦で向かうということ自体、珍しいことであるはずだった。俺は羽田で谷口さんから、もうひと組(こちらはスペイン人と日本人)夫婦が滞在していると聞いていた。
しかも通常は半年から1年程度の任期が多いと聞いていたところが、ジョーダンたちの場合はそうではなかった。なぜかと言えば、そこでスタッフが挑戦している『リプロダクティブ・ヘルスに関わるミッション』と国の状況が他とは根本的に異なる性質を持っているからだった。
詳しいことはまた別の機会に話そう。
ともかく現実味のないくらい格好のいい2人に連れられて入った部屋には、さらに3つの部屋があり、リビングダイニングがあった。ただし、そのリビングには段ボール箱が積まれ、中に注射器や保存用の水が入っていた。ミッションに使う道具もまた、その部屋には置かれていたのである。
ジョーダンは俺たちにそれぞれ小さなビニールの袋を渡した。中には部屋の鍵、主要スタッフ全員の役職と名前と電話番号が表になったコピー用紙が入っていた。
その説明を軽くしながら、同じマンションに住んでいることをジョーダンは教えてくれた。他のスタッフもそこにいるし、近くのマンションにはまた別のスタッフたちがいることもわかった。
彼らスタッフが集まるマラテ地区は観光客には評判のあまりよくない場所だが、決して危ないところではないとジョーダンは言った。ただし、ジョーダンは俺たちがこれから取材で連日訪れることになるスラム地区でさえ「言われるほど危険ではない。住人はきわめて親切なんだよ」と評価するのだが。
翌日の早朝、ビルの下にMSFの日々の迎えの車が来ることをジョーダンは俺たちに丁寧に告げ(迎えが来ること自体がある種のリスク回避なのだが)、にこやかなエリンと仲よく去っていった。
マラテ地区の夜
さて明くる日からどんな取材になるのだろうか。
とりあえずは車で近くのエルミタ地区にあるMSFのオフィスまで行き、ジョーダン本人からくわしいブリーフィングがあることはわかっていた。これまでの2回の渡航でも必ずそうなっていたから。
で、俺たちは自分たちだけで外に出て軽い夕食をとろうとした。
下の道に降りると、例のキャバレーがあり、その少し先にも同じような店があるのがわかった。だが他にレストランがない。
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