欧州の命運を握る重大選挙がめじろ押し
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月13日 11時0分
<極右政党は本当に欧州で主流になる? 試金石となる選挙で押さえるべきポイントとは>(写真:フランス社会党予備選候補のアモン前教育相)
難民問題と極右政党の台頭に頭を悩ませた昨年は、ヨーロッパにとって試練の年だったと感じるかもしれない。だが、それは序章にすぎない。今年予定されている各国の選挙は、当事国だけでなく欧州全体の未来にとって極めて重要なものになる。見過ごせない5つの重大選挙を概観してみると......。
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■3月15日 オランダ総選挙
極右政党の台頭に悩むヨーロッパにおける今年最初の試練。反イスラムを掲げるヘールト・ウィルダース率いる極右政党・自由党が勝利すれば、イスラム教徒への締め付けが強まりEU懐疑主義を国外にも広めることになる。EU支持派はルッテ首相率いる自民党の勝利を願うばかりだが、世論調査は大接戦を予想。自民党が勝っても過半数に届かず、自由党と連立を組む可能性も指摘されている。
【参考記事】「トランプとプーチンとポピュリストの枢軸」が来年、EUを殺す
■4月9日 セルビア大統領選挙
セルビアの大統領は儀礼的な存在だが、地政学的な観点から今年の選挙は興味深い。EU加盟候補国のセルビアに対し、ロシアが軍事面の協力強化などで急接近しているからだ。
現職のニコリッチ大統領が勝てば、ロシアへの気遣いを見せつつEU加盟の道を探る難しい舵取りが続く。ライバルは極右政党・セルビア急進党のボイスラフ・シェシェリ党首。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で90年代の紛争における戦争犯罪に問われたが昨年、無罪を勝ち取り出馬。EUが恐れる反グローバリズムを掲げる。
■4~5月 フランス大統領選挙
注目は、泡沫だった極右政党・国民戦線を一大勢力に引き上げたマリーヌ・ルペン党首だ。経済的ポピュリズムと反移民を織り交ぜた政策で、大統領の座を射程圏内に捉える。反EU主義のルペンが勝利すれば、EUは本当の危機へと向かうだろう。
ルペンと対峙するのは共和党予備選を勝ち抜いたフィヨン元首相で、この2人の一騎打ちが現実的なシナリオだ。ダークホースはマクロン前経済相。ブレア元英首相風の改革と中道的な主張を掲げる。「中道の死」が報じられて久しいなかでマクロンが勝てば大波乱になる。一方、現政権の社会党がオランド大統領に代わる候補者を見つけ、下馬評を覆す可能性は......かなり低い。
■9月11日 ノルウェー総選挙
現政権と同様、どの政党がどこと連立を組むかがポイントになる。現在はソルベルグ首相率いる保守党がポピュリスト政党の進歩党と組んで内閣を構成する。閣僚は出していないものの、政治合意という形で政権に関与する自由党とキリスト教民主党も力を持つ。ストーレ元外相率いる労働党が政権奪取を狙うが、「障害」は原油価格。上昇基調が続けば石油輸出国のノルウェー経済は回復し、選挙で与党に有利に働くだろう。
■8~10月 ドイツ連邦議会選挙
今年実施される選挙の中で最もつまらない結果に終わるだろう。メルケル首相は難民問題をめぐり自身が率いる与党内の右派勢力と、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)からの批判にさらされている。「メルケル敗北」となればヨーロッパに激震が走るだろうが、その可能性は低く、彼女が4度目の勝利を得るのは間違いない。
[2017.1.17号掲載]
ジョシュ・ロウ
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