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スコセッシ『沈黙』、残虐で重い映像が語る人間の精神の勝利

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月20日 11時0分



 拷問シーンは見ていられないほど残虐だ。打ちつける波の中で人々が責め苦を与えられたり、生きたまま焼かれたりする姿が描かれる。そしてなお続く「神の沈黙を、私はこの人たちにどう説明したらいいのか」とロドリゴは思い悩む。

 それでも本作は、ぜひとも見るべき作品だ。心の準備をして、鑑賞後には予定を入れずに見て欲しい。映画館を出ても、この作品の余韻は消えないからだ。ハリウッドがよく使う「人間の精神の勝利」という薄っぺらな言葉の真実がここにある。

 近年のスコセッシ作品には、自らの初期の作品の原動力となっていた壮大な強迫観念を追い求めているような印象があった。『沈黙』は久しぶりに、初期作品と同じ差し迫った緊迫感を伴う作品だ。そしてそれがもたらすものは、神の恩寵に近いようにさえ感じられる。

≪映画情報≫
SILENCE
『沈黙―サイレンス―』

監督/マーティン・スコセッシ
主演/アンドリュー・ガーフィールド
   アダム・ドライバー
日本公開は1月21日



[2017.1.24号掲載]
トム・ショーン


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