辣椒(ラージャオ)さんとの出会い――亡命漫画家『嘘つき中国共産党』
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月26日 17時30分
彼が描いた中国共産党と戦う理由の中に、「移動の自由」「言論の自由」などがある。
中国共産党の一党支配が終わらない限り、中国に民主が訪れることはなく、真実を言っても逮捕されない日々が来ることはない。
筆者は自分が生きている間に、言論の自由が保証される中国が来ることはないと見極めたので、中国の真相を思い切って書くことを決意した。
彼もまた中国に民主が来るために、故国を捨てででも表現しているのだという。
そして「中国共産党の嘘」の正体を徹底して暴くには、そもそも中国共産党がどのようにして強大化するに至ったのかという「党史」を調べなければならないと思っていたが、それにはとてつもない時間がかかる。そんな中、日中戦争時代の毛沢東に関する遠藤の本の存在を知ったので、一刻も早く会いたかったとくり返した。
中国共産党の嘘を見やすい形に
中国共産党が国家の根幹に関わる大きな嘘をついているのは明らかだ。
筆者は中華人民共和国誕生までの嘘を描き、辣椒さんは建国後および現在の嘘を描いている。その二つがつながれば、中国の嘘の全貌が見えてくるだろう。もちろん彼が描いているのは筆者も知っている嘘ではあるが、しかし、漫画という、しかもこの風刺のきいた手法によって描く効果はひとしおだ。中国の嘘の全貌が、非常に見やすい形で伝わるにちがいない。
ただ、その中国に対して、なぜ日本政府は強いことを言わないのか、なぜ中国が嘘をついていることを示していかないのか。そうすれば中国で虐げられている人々がいつか自由になる日が来るかもしれないというのに、日本は中国に厳しいことを言わないと辣椒さんは嘆く。日本が大好きだが、しかし一方では、そういう日本のあり方を悔しがっている。この視点においても、われわれ二人は共鳴し、理念を共有したのだった。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
≪この筆者の記事一覧はこちら≫
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
この記事に関連するニュース
-
米亡命の中国人実業家に有罪評決、フォロワーから数億ドル詐取
ロイター / 2024年7月17日 12時38分
-
公務員試験の倍率は驚異の3572倍…「学生の2人に1人が無職」の中国で共産党加入者が殺到する深刻な理由
プレジデントオンライン / 2024年7月15日 8時15分
-
中国吉林大学のドイツ人助教、習近平国家主席の欧州訪問は「米国と欧州の間にくさびを打ち込むこと」とメディアに発言 国外退去に
NEWSポストセブン / 2024年7月9日 7時15分
-
失業した若者が階段や公園で行き倒れている…不動産バブルがはじけた中国の「ゾンビ経済」の実態
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 8時15分
-
日本の主権を侵害する香港当局を政府は許すのか 香港の民主・人権活動家が日本に向かわない3つの理由
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 12時0分
ランキング
-
1トランプ氏殺害予告の男逮捕=SNSに投稿―米フロリダ州
時事通信 / 2024年7月21日 5時49分
-
2トランプ氏“暗殺未遂事件”で蔓延する“陰謀論”と“フェイク” 右派も左派も拡散の異常事態 深まる分断 米大統領選の行方は【報道特集】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月20日 21時30分
-
3トランプ氏、右耳の傷は幅2センチ=元主治医が明かす
時事通信 / 2024年7月21日 14時26分
-
4在韓米軍、F16飛行隊増強 ソウル南方基地で1年間
共同通信 / 2024年7月21日 5時28分
-
5空爆で死亡した妊婦から胎児救出 ガザ病院
AFPBB News / 2024年7月21日 14時39分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください