顔パスでOK!?生体認証を活用した出入国管理システムをオーストラリアが導入へ
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月27日 18時30分
<オーストラリアは、顔認証や虹彩認証、指紋認証による"パスポート不要"の自動化出入国管理システムを導入する5カ年計画を発表。2019年3月までには、国内全ての国際空港で導入見込みだ>
指紋や顔貌、瞳の虹彩など、人間の身体的特徴を個人認証に利用する生体認証の技術が、近年、様々な分野で実用化されてきた。オフィスなどの入退場時の本人確認に顔認証システムが導入されたり、虹彩認証によりユーザーが画面を見つめるだけでロックが解除されるスマートフォンがリリースされたりしている。
また、銀行では、口座名義人の指静脈情報を事前にICキャッシュカードに登録し、ATMの認証装置で利用者の指静脈画像と照合することにより本人確認できる生体認証サービスが普及しているほか、2016年2月には、イオン銀行が、キャッシュカードの挿入や暗証番号の入力などを一切要さず、指でタッチするだけで銀行取引ができる指紋認証システムの実証実験に着手した。
「SmartGate」をさらに進化させる
生体認証は入出国管理にも活用されはじめている。オーストラリアでは、移民省(DIBP)が、9億3,700万豪ドル(約806億円)を投じ、生体認証による"パスポート不要"の自動化出入国管理システムを導入する5カ年計画「Seamless Traveller(シームレス・トラベラー)」を2015年5月に発表。2017年7月以降、キャンベラ国際空港などで実証実験を行ったのち、2019年3月までには、オーストラリア国内全ての国際空港に新しい出入国管理システムが導入される見込みだという。
オーストラリアでは、従来の有人による出入国審査に加え、ICチップを搭載したパスポートの保有者が利用できる自動化出入国管理システム「SmartGate(スマートゲート)」を2007年から導入。専用端末でパスポートをスキャンし、旅行者の顔画像とICチップに保存された画像データを照合する仕組みだ。「Seamless Traveller」では、「SmartGate」をさらに進化させ、顔認証や虹彩認証、指紋認証によってパスポート不要の自動化出入国管理システムを構築しようとしている。これによって、旅行者は、パスポートの提示すら必要なく、より速く、シームレスに、入出国審査を完了できる一方、入国審査官は、要警戒者の特定などに注力できる。
日本でも、2009年からパスポートと指紋認証による自動化出入国審査システム「自動化ゲート」が導入されているが、「Seamless Traveller」の"パスポートレス"な出入国管理システムが広く実用化されれば、"顔パス"で国境を往来できる日も、それほど遠い未来ではないかもしれない。
松岡由希子
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