シリアで起きていることは、ますます勧善懲悪で説明できない
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月1日 18時0分
任期終了間近のオバマ政権が助長した反体制派の離合集散
反体制派の離合集散は、任期終了を間近に控えたバラク・オバマ米政権がシャーム・ファトフ戦線に対する空爆を頻発化させたことでさらに助長された。
米軍の空爆は、シャーム・ファトフ戦線の幹部が乗った車輌や拠点をピンポイントで狙った正確なもので、1月19日には、アレッポ県北部のシャイフ・スライマーン村の基地を破壊、戦闘40人以上を殲滅した。しかし、こうしためざましい戦果は、シャーム・ファトフ戦線と共闘してきた「穏健な反体制派」が索敵情報を提供しているのではとの疑念を抱かせた。
1月21日、シャーム・ファトフ戦線が、イドリブ県北部のザーウィヤ山地方一帯のシャーム自由人イスラーム運動の拠点を襲撃すると、この疑念は戦闘へと発展した。国境管理の利権争いに端を発していたとされるこの襲撃の中核を担ったのは旧ジュンド・アクサー機構だった。彼らは2016年9月、米国務省によって特別指定グローバル・テロ組織(SDGT)の指定を受けたのち、2016年10月にシャーム自由人イスラーム運動との対立を理由にシャーム・ファトフ戦線に吸収統合されていた。
シャーム自由人イスラーム運動との対立を再燃させた旧ジュンド・アクサー機構に対し、シャーム・ファトフ戦線は破門を言い渡すことで事態収拾を計った。だが、戦闘は止まず、シャーム自由人イスラーム運動は1月22日、アスタナ会議に参加したイスラーム軍、ムジャーヒディーン軍、「命じられるまま正しく進め」連合(シャーム戦線所属組織)と合同作戦司令室を設置し、旧ジュンド・アクサー機構の掃討に本腰を入れた。
【参考記事】アレッポ攻防戦後のシリア紛争
二つのアル=カーイダ系組織を軸に離合集散する反体制派
対立はこれにとどまらなかった。1月24日、今度はシャーム・ファトフ戦線本体が、ザーウィヤ山一帯を含むイドリブ県北部とアレッポ県西部(およびアレッポ市西部郊外)で、ムジャーヒディーン軍、シャームの鷹旅団、シャーム戦線の拠点を制圧していった。窮地に立たされた3組織は、シャーム自由人イスラーム運動に支援を求め、「忠誠」(バイア)を表明した。また、イスラーム軍(イドリブ地区)、シャーム戦線(西アレッポ地区)、「命じられるまま正しく進め」連合、シャーム革命家大隊も、シャーム・ファトフ戦線の侵攻から身をまもるべく「忠誠」を表明し、シャーム自由人イスラーム運動は26日、これらの組織を吸収するとの声明を出したのである。
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