トランプとの会談は日ロ首脳会談の二の舞にするな
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月9日 17時19分
この戦略は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する安倍のアプローチを連想させる。昨年12月にプーチンが訪日した際、安倍は官民合計80件の経済協力案件を提示、ロシアに3000億円規模の投融資を行うと約束した。この提案は、北方領土問題でプーチンから譲歩を引き出すと共に、対中包囲網にロシアを引き込むための「ニンジン」だったが、安倍の思惑は見事にはずれた。
【参考記事】プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴
だが日本にとってロシアとの友好が贅沢品とするなら、対米関係は必需品だ。
「トランプのアメリカとどう付き合うかは日本の死活問題だ」と、パジョンは言う。北朝鮮の核と中国の海洋進出という2つの脅威に対し、日本には日米同盟に代わる抑止力がない。だがトランプは、日本は平和憲法を盾にとり、軍事支出を抑えてきたと思い込んでいる(安倍はこれを変えようと最大限の努力をしているのだが)。
安倍の手腕しだいで、日本をうまく売り込むことは可能だ。日本は東アジアで最も安定したアメリカの同盟国であり、トランプ政権の少なくとも一部の閣僚はその事実を理解している。ジェームズ・マティス国防長官は就任後初の外遊先に韓国と日本を選び、これまでどおり同盟関係を重視すると強調した。マティスは日本に防衛負担の増加を求めることもなかった。
対中強硬策は日本に危険
それでも日本は安心できない。レックス・ティラーソン国務長官を筆頭に、トランプ政権の一部閣僚は、南シナ海での中国の活動を阻止するため強硬措置を辞さない姿勢を打ち出している。これに対し、中国軍の一部強硬派が「開戦」の可能性をちらつかせるなど、キナ臭い雰囲気になってきている。米中間の緊張が高まれば、日本も紛争に巻き込まれかねない。
【参考記事】トランプ大統領誕生は中国にとって吉と出るか凶と出るか
差し迫った脅威は中国の東シナ海進出だ。これに対抗する日本の究極の拠り所は日米安全保障条約であり、良好な日米関係はまさしく死活問題だ。マティス長官が日本を守ると明言して離日した後、嫌がらせのように中国海警局の船3隻が尖閣諸島沖合の日本の領海に侵入した。
バラク・オバマ前大統領もマティスも尖閣諸島が日米安保条約の適用対象だと明言した。安倍はトランプかその保証を手土産に帰国したいと思っているはずだ。
【参考記事】トランプに電話を切られた豪首相の求心力弱まる
From Foreign Policy Magazine
エミリー・タムキン
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