サードは無力? 北朝鮮の新型ミサイルは米韓の戦略を無効にする
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月13日 22時30分
弾頭部分は従来のSLBMよりも緩やかな丸みをもっており、北朝鮮が昨年3月に公開した弾道ミサイルと形状が似ている。これは大気圏再突入を想定したものと見られる。またムスダンミサイルは、6輪のトレーラーのような移動発射車両に搭載されているが、今回の「北極星2型」は戦車のようなキャタピラーで走行する車両に発射管を装着していたもので打ち上げられたこともこれまでにはなかった点だ。キャタピラー型の車両になると山岳地帯が多い北朝鮮でも移動可能な場所が広がるため、従来想定されなかった地域からのミサイル攻撃も警戒が求められる。
今回、韓国軍が注目しているのは「北極星2型」は1段エンジンのみのロケットだったが、これを2段式にすれば事実上ICBMになるという点だ。キョンナム大学極東問題研究所のキム・ドンヨブ教授は「今回発射したミサイルに2段エンジンを結合すれば、ICBMとして十分飛行するだろう。今回の「北極星2型」は、ICBMに進むための中間段階の新しいミサイルで、SLBMやKN-08、KN-14とはまったく違う新型ミサイルと見なければならない」と分析した。
また、固体燃料を使用していることから、燃料注入作業が必要な液体燃料での打ち上げに比べて移動と発射を密かに迅速に行うことができる。韓国とアメリカが事前に打ち上げを探知することが難しくなり、迎撃にも時間がかかると予想される。
サードで迎撃可能か?
韓国メディアNEWSISによれば、この迎撃体制については、12日の「北極星2型」を韓国軍と在韓米軍は発射2分後に検知したということが判明している。この点について合同参謀関係者は、「従来、北朝鮮のミサイルはマッハ9.5の速度で飛行しているが、今回はそれ以上の速度を出している」と記者会見で明らかにした。
現在、韓国軍と在韓米軍が配備している迎撃ミサイル、パトリオット-2、3では「北極星2型」を迎撃することは不可能ということだ。そして、年内に配備が予定されているサードでも限界があるという指摘が出されている。
パトリオット-2、3はマッハ4〜5の速度で落下する弾頭だけを迎撃することが可能だが、サードはマッハ14まで迎撃が可能だ。だが、サードにも弱点がある。マッハ14まで迎撃可能なのは正面に落下する弾頭だけなのだ。北朝鮮が韓国を攻撃する際にサードの配備予定場所である慶尚北道星州(キョンサンブクド・ソンジュ)に正面からミサイルを撃ち込むはずはなく、側面から迎撃することになればサードでも対応しきれない、という指摘が出てきている。
しかも、北朝鮮が今回と同じ固定燃料を既存のノドンミサイルに応用すれば、サードではまったく刃が立たなくなる。キム・ドンヨブ教授は「今回の新型ミサイルの登場は、北朝鮮が固定燃料を使ったという点で、韓国のミサイル迎撃システムをほとんど無力化させることができることを意味する」と語っている。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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